• HOME
  • 記事一覧
  • RECOMMEND
  • ドローイングに宿るアーティストの個性|「OIL by 美術手帖」のドローイング特集

ドローイングに宿るアーティストの個性|「OIL by 美術手帖」のドローイング特集

絵画や彫刻を生み出すアーティストが、テーマやコンセプトを練りあげる過程で生み出す瑞々しいドローイング。アーティストたちがドローイングについて語ったコメントを読みながら、「OIL by 美術手帖」であなたの感性に響く作品を見つけてみてください。

 

シュテファン・バルケンホール(小山登美夫ギャラリー)

シュテファン・バルケンホール Untitled 7-10 2007 木炭、紙 30.0×21.0cm

ドローイングは、スケッチみたいなもので、“考えるための手段”であると同時に“自分のアイディアを可視化するためのひとつの方法”でもあります。そして、ドローイングは“彫刻のための下絵のようなもの”で、展示するためのものではありませんが、見るに値する、とても興味深いものです。

──シュテファン・バルケンホール

ウェブ版美術手帖「虚実のあいだを彷徨う現代人の肖像、その詩学。シュテファン・バルケンホール インタビュー」より)

ドイツ・カールスルーエを拠点に活動するシュテファン・バルケンホールは、人物、動物の描写とミニマリズムを両立させた「普通のようで普通でない」独特の世界観と、人間と動物への尽きることのない興味の眼差しによって木彫作品を制作してきました。そのさりげない軽やかさとユーモアは、多くの人々を魅了します。

→シュテファン・バルケンホールの作品一覧を見る

大野綾子(KAYOKOYUKI)

大野綾子 4つ 2019 アクリル、ポスターカラー、紙 18.0×26.0cm

いずれは、ドローイングの線が彫刻になることを想像し、手を動かします。その彫刻が持つ強いかたちと、空間や雰囲気を確認するための行為です。そこには、時間をかけて石を彫るときの注意深いスピード感が存在するのです。

──大野綾子

学生時代より一貫して石彫を制作してきた大野綾子。植物や、水が流れる自然風景から着想を得て、独特のかたちをつくりだします。また、大野は身近な道具や日常的な行為からもイメージを集め、人々の生活に潜むありとあらゆる事象を、作品の中に要素として取り込んでいます。

→大野綾子の作品一覧を見る

利部志穂(KAYOKOYUKI)

利部志穂 carotte 2018 色鉛筆、マーカー、紙 12.8×18.2cm

私にとってドローイングは、曖昧な、頭の中や心の中の目に見えないものを、表出し意識化する、初めの一歩。 そこで用いられる画材、色、紙がうまくマッチすれば、紙の上で、大切な場所、時間、瞬間に立ちあえる。 そしてまた、そのドローイングによって触発され、様々な作品がうまれる。ときに、失敗して、結びつかない、抜け出せない、つまらない自分にも遭遇する。 しかし、その初めの一歩を踏み出す勇気が、アーティストにとって、私にとっては、なくてはならないもの。 まだこの世界には、現れていないものを生み出すために。

──利部志穂

生活の中で不要となったものや、壊れて廃棄されたもの、あるいはホームセンターで購入できる建築資材など、様々なものを使用して彫刻作品を制作する利部志穂。作品を通じて、多様なものが有する日常的な意味や機能を解体し、組み合わせて接合することによって、新たな関係性をつくりだします。

→利部志穂の作品一覧を見る

加賀美健(MISAKO&ROSEN)

加賀美健 Drawing 2019 マーカー、紙 29.6✕21.0cm

僕にとってのドローイングとは、シンプルです。 いちばんシンプルに表現ができるツールでしょうか? ドローイングのときはあまり色を使わないし、すぐにできあがります。 極力、シンプルに表現ができるものです。

──加賀美健 

加賀美健は、社会現象やカルチャーなど、様々なジャンルをテーマに作品を制作してきました。消費社会の切なさを楽観的でポジティブなアイデアへと変容させたり、見る者の好奇心を刺激するいたずらのような作品を発表し続けています。

→加賀美健の作品一覧を見る

土肥美穂(HAGIWARA PROJECTS)

土肥美穂 Untitled 2017 鉛筆、アクリル絵具、パステル、インク、紙 35.0×25.0cm

木、真鍮、銅板、糸、布、紙など、異なる素材を接合し、ときに彩色を加えることで、人間の視覚がとらえる質感にズレを生じさせることを意図するような作品を制作する土肥美穂。素材とかたちの調和と反発、それを巧みにコントロールすることで生み出される造形の躍動感が、生命力を想起させます。

→土肥美穂の作品一覧を見る

野沢裕(KAYOKOYUKI)

野沢 裕  丸 砂漠 内 石 2010 水彩、インク、紙 21.0×28.5cm

ドローイングは、印象的なできごとを残しておくために描きます。新しい場所に行ったときに出合う、ものごとや色など。写真を撮っておくだけではたりないと感じたときに、旅先のホテルや家に帰って思い出しながら描きます。メモのように描くことも多いので、「小さな緑の家を見ていたときに雨が降ってきた」といった場合だと、小さな緑の家と雨とそのとき吹いていた風の強さと布の動きなどを描いたりします。結果、作品の設計図のようなドローイングとなるようなこともあるし、ただ描くことが楽しくなって、メモとはかけ離れたドローイングになったりと様々です。

──野沢裕

野沢裕は、写真やインスタレーションを中心に、様々な手法によって、複数の時間や空間が重なり合うようなしかけを持った作品を制作しています。その作品づくりにおいては、風や鳥といった自然の事物や、予測できないできごとを取り扱うことが、大切な要素のひとつとなっています。

→野沢裕の作品一覧を見る

廣直高(MISAKO&ROSEN)

廣直高 Untitled 2015 色鉛筆、水彩、紙 61.0×45.7cm

ドローイングは僕にとって、アートプラクティスの核であり、始まりであり、地図であり、鏡であり、分身であり、軌跡であり、計画図です。

──廣直高

廣直高は「自分という間違いない存在であるにもかかわらず、肉眼で確認することのできない自身の身体」をコンセプトに作品を制作しています。絵画、彫刻、映像、パフォーマンスといった様々な表現方法で、身体に対しての新しい解釈を生み出すアーティストです。

→廣直高の作品一覧を見る

マーガレット・リー(MISAKO&ROSEN)

マーガレット・リー Untitled 2017 水彩、紙 23.7×17.5cm 

Drawing reveals things I prefer to keep hidden. 

ドローイングによって、隠しておきたいものが明らかになります。

                     ──マーガレット・リー

ニューヨークを拠点に、世俗的な問題や異性関係、セクシャルな問題までを軽やかなタッチで描くマーガレット・リー。その作品のアイディアには、どこか可愛さが秘められています。また鑑賞者への圧倒的な想像力をかき立てるビジュアルも彼女の作品の特徴です。

→マーガレット・リーの作品一覧を見る