アメリカ人アーティスト、ジョン・バルデッサリ（John Baldessari）の作品集。

「2つのものを見る時は、ものではなく、その間の空間を見なくてはならない…重要なのは2つのものの間の空間だ」– ジョン・バルデッサリ

作者の最晩年の絵画シリーズを収録した本作は、キャンバスに描かれた30点の絵画を通じて、言語とイメージ、前景と背景、写真と絵画、存在と不在など、2つのものの間の空隙が探求されている。

いかにも作者らしい、ウィットに富んだ時に不条理さも感じさせるオブジェとテキストの組み合わせには、映画のスチルやファウンドフォトから得たイメージが使われている。その上から白や黒の絵具を塗って一部を隠すことによって、それぞれのシーンの中の特定の要素を強調するとともに、他の要素を目立たなくしている。

このシリーズを通じて、身体の部位、ジェスチャー、道具といったいくつかのテーマが自ずと姿を現してくる。一見平凡でありながら、見る者に驚きと感動を与える作者にとって最後のこのシリーズには、もの、人、概念の間に存在する不定形の空間の探求という作者の芸術の真髄が美しく内包されている。

キュレーター、作家、カリフォルニア大学ロサンゼルス校美術学部教授のラッセル・ファーガソン（Russell Ferguson）、キュレーター、評論家、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリーの芸術監督のハンス・ウルリッヒ・オブリスト（Hans Ulrich Obrist）、芸術家であるバーバラ・ブルーム（Barbara Bloom）、デヴィッド・サル（David Salle）によるエッセイに加え、アーティストのキャサリン・オピー（Catherine Opie）によるポートレートを収録。

本書はロサンゼルスの「Sprüth Magers」で2021年に開催された展覧会に伴い刊行された。