アメリカ人アーティスト、ジョン・バルデッサリ（John Baldessari）の作品集。作者の全作品を網羅するカタログレゾネの第1巻。

コンセプチュアルアートの先駆者として世界的に高く評価されている作者は、1950年代に画家としてキャリアをスタートしたが、文章とファウンド・フォトあるいはアプロプリエ―ション表現に基づきイメージを並列するという独自の手法を用いて、その後数十年に渡り革新的な表現を模索していき、拡大していった。作者の用いるテキストは、芸術と芸術鑑賞という体験の本質を問いかけ、それに伴うイメージの新たな解釈の可能性を示唆していた。作品において常に重要な要素となっていたのが、言葉とイメージの相互作用である。サイトスペシフィックなインスタレーション、ドローイング、映像、彫刻、プリンティング作品、マルチプル作品と様々な表現方法が取り入れられてもそれの核は変わらなかった。

豊富な美しいイメージを掲載した6巻セットのカタログの第1巻となる本書は、約500点の作品を通じて、初期のバルデッサリの思考の変化を時系列に添って記録している。1953年から1966年にかけて制作した作品の「死体」を燃やした1970年の「火葬プロジェクト（Cremation Project）」などの代表作も見ることができる。このプロジェクトで作者は、「火葬」した作品の灰をクッキーに混ぜて焼き、残りは本の形の骨壺に入れ、誕生日と死亡年月日を入れたプレートを添えて展示した。その作品と教訓は、その後に続く世代のアーティストたちにも多大な影響を与えてきた。

こうした作品制作の原動力となったバルデッサリの精神について考察した、ニュージャージー州プリンストン大学高等研究所歴史研究科の教授であるイヴ＝アラン・ボワ（Yve-Alain Bois ）のエッセイ、美術批評家のクリストファー・ナイト（Christopher Knight）によるインタビューを掲載。

全巻を通して、エディトリアル・ディレクターはロバート・ディーン（Robert Dean）、リサーチ・エディターはパトリック・パルド（Patrick Pardo）が担当する。