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「Collectors’ Collective Vol.4 Osaka」|アートコレクター3名が今年注目する作家の新作を販売中

Tezukayama Galleryでアートコレクター3名によるコレクション展が開催中(2月20日まで)。「OIL by 美術手帖」でも彼らが今注目する作家の新作をご購入いただけます。

「Collectors’ Collective」

 コレクター3名がこれまでコレクションしてきた所有作品を展示し、彼らが「今」注目している若手アーティストから人気アーティストの新作を購入できる展覧会です(通称:コレコレ展)。東京では過去3回、今回の大阪では初の開催となります。

 「OIL by 美術手帖」でもコレクターの推薦文とともに作品をご紹介します。この機会にぜひチェックしてみてください。

コレクター01: 播磨勇弥

石原梓

 石原梓さんは、2016年のシェル美術賞入選や、2019年・2020年のARTISTS’ FAIR KYOTOに塩田千春の推薦で出展するなど、関西を中心に活躍している作家です。石原さんはよく河原を散歩するようで、そこで見た空や川の景色、魚や草などから感じたことを、夕日を思わせるグラデーションや、水の煌めきのような小さな光の粒、風の流れを思わせる自由な線などでキャンバス上に表現しています。私たちが普段から見ているはずの景色も、石原さんの目には、こんなにも美しい世界に見えているのかと思うと、少し羨ましくなってしまいます。これからもどのような美しい世界を私たちに見せてくれるのか楽しみです。

石原梓《100年後#2》2020

 

宮原野乃実

 宮原野乃実さんは、ARTISTS’ FAIR KYOTOへの出展や、今年の5月に発売された雑誌「CASA BRUTUS」のNEW GENERATIONで紹介されるなど、注目を浴びる作家です。数年前に、代表作である「ざくろ」シリーズをオンラインで拝見した際に、陶製手榴弾とジオラマという素材としても時代としても全く異なる組み合わせが、様々なことを連想させ、こちら側の想像力が試されているようでとても面白いなと感じました。お話しを伺うと、作品の舞台となる現地に赴き、徹底したリサーチを行い、その土地で集めた素材と既製のジオラマ模型と組み合わせることで、その土地の物語を作品として表現しているようです。一見、キャッチーな作品にも見えますが、背景には様々な歴史や物語が潜在しており、それを軽やかに表現しているところに凄さを感じます。宮原さんのフィールドワークにより生まれる物語のような作品を、いつか私もコレクションしたいと思っています。

宮原野乃実《ざくろ#68》2020

 

飯田美穂 

 飯田美穂さんは2016年に発売された「美術手帖12月号特集 あなたの知らないニューカマー・アーティスト100」で紹介されているのを見て知った作家です。飯田さんの作品は、オールドマスターの名画をモチーフに、人物画の象徴とも言える顔を「∵」などの記号に置き換え、豊かな色彩や自由な筆跡で描く作風が特徴です。そのゆるーい雰囲気は、モチーフに忠実な作品というより、モチーフとなる作家や作品の徹底したリサーチを行い、飯田さん独自の解釈や表現で新たな作品として生まれ変わらせているように感じます。また、キャンバスだけではなく、ヴィンテージガラスやビニール、鏡など、様々な支持体に描くことで、質感や色合いにそれぞれ違いが生まれている点も飯田さんの作品の面白さだと思います。これからもどのようなオールドマスターの名画を飯田さんの世界観で表現してくれるのかとても楽しみです。

飯田美穂《Poster, Y. K.》2019

 

山田千尋

 山田千尋さんは、昨年開催されたGallery Nomartの公募展「U35」に選ばれた新進気鋭の作家です。山田さんは、ゲロ・怪我・プロレス・赤ちゃんなど全く共通性の見られない独特なモチーフを、迷いのない軽やかなドローイングや、一見すると水彩画のようにも見える独特な彩色のペインティングで表現しています。代表作とも言えるゲロや帯状疱疹がモチーフの作品は、どう考えても不快なモチーフなんですが、見ていても不思議と嫌な感じがせず、むしろ美しく感じる時もあるという、全くもって訳がわからない作品です(笑)。作品自体も素晴らしいのですが、以前インタビューをとらせていただいた際に、憧れの作家であるエリザベス・ペイトンの作品を「宝石」と表現していたのがとても印象的でした。表面的な美しさと、絵の中に込められた想いや愛情を感覚的に感じているのだと思いますが、そのように絵画を「宝石」と表現できることは本当に素敵な感性だと思いました。これからも、どんな「宝石」のような作品を描いてくれるのか、とても楽しみです。

山田千尋《帯状疱疹》2020

 

御村紗也

 ここ数年、ペインティングに版画技法を取り入れて表現する若手作家が増えてきていますが、御村紗也さんはその中でも私が最も注目している作家です。御村さんの作品は、普段目にするような景色や物をモチーフに、ペインティング・シルクスクリーン・スプレーなどの様々な技法で描かれており、柔らかな線や淡い色味の背景が、どこかノスタルジーで優しい雰囲気で、とても心地いい作品です。ラメを含んだインクや光沢感のある絵具など様々な画材を使用しているため、光の当たり方や角度によって見え方に変化が生まれる点も、とても面白いなと感じます。現役の大学院生でありながらこの完成度… 今後どのような作家となっていくのか、本当に楽しみです。

御村紗也《replete》2020

コレクター02: 有田啓

岡田佑里奈

 兵庫県出身、2020年京都造形芸術大学修士課程修了。 岡田さんは、人物や風景のモノクロ写真をクラック(ひび割れ)させた独自の作品を制作しています。The Art of Color DIOR 2019に入選するなど評価の高かった写真作品に、レイヤーを追加して新たな表現に挑戦するという積極的な姿勢が素晴らしく、実際それらの作品が卒展で多くの人々の目に留まり、その後の活躍につながったようです。元は複製可能な写真でありながら、クラックの処理が難しく、エディション作品でありながらひとつとして同じものはないというところにもコレクター心がくすぐられます。昨年さまざまな場所で作品を見かけた彼女ですが、いい意味で周囲の環境に溶け込みやすい作品を作るので、アート作品を購入したことがない、家に飾ったことがないという方の最初の1品としてもオススメしたい作家です。

岡田佑里奈《Dream in out 03》2020

 

井田大介

 1987年鳥取県生まれ。TEZUKAYAMA GALLERY(大阪)所属。 貧富の格差や過度な生産性重視といった現代社会の事象を解体・再構築し、社会システムの歪みやジレンマをテーマとした彫刻や映像作品を制作している作家です。井田さんは、そのコンセプトからか樹脂や3Dプリンター、ARなど現代の産業で使われる比較的新しい素材や技術を用いることが多い印象で、自分の仕事柄それらに少し馴染みがあったので興味を持ちました。私のような美術史に明るくない人間からすると、正直なところ理解するのが難しい作風なのですが、過去から学び、今という時代を生きているからこそできる象徴的な作品の数々が、遠い未来でどのように評価されるのか、長い時間軸で見ていきたいと思える作家です。

井田大介《Photo Sculpture 「The Gates of Hell」》2020

 

豊田涼華

 2019年 京都造形芸術大学油画コース卒業、東京藝術大学大学院 美術研究科 絵画専攻在学中。 豊田さんはまだ学生ですが、昨年東京のWAITINGROOMで開催されたグループ展でコマーシャルギャラリーデビューを果たしています。実際に現地に赴いて写真に収めたものやWEBから拾った画像など、自分の目に映った人々の姿を描いているとのことですが、目には映らない何かの気配を感じてしまうような、独特の空気感を纏う作風に惹かれ、そのとき出品されていた作品を購入させてもらいました。まだ対外的な露出が少ないため、作品に触れる機会は多くはありませんが、修了展と重なる大変な時期に、また、コロナ禍で一時期は制作もままならなかったにも関わらず参加してくれたことに感謝するとともに、今回の展示が少しでも彼女のキャリアのプラスになればと願っています。 

豊田涼華《hypnagoia》2020

 

亜鶴

 1991年生まれ。兵庫県出身、大阪府在住。 実在しない人物のポートレートを描くことで他者の存在を承認すると同時に、自己の存在へと思慮を巡らせるというテーマで制作活動を行っている作家です。刺青施術スペースを運営するタトゥーアーティストでもあります。個人的な話になってしまいますが、私が作品を購入するときの判断材料のひとつに、ヒリヒリするようなシリアスさを感じるかというのがあります。亜鶴さんの作品は、本音は隠しているように思えるながらも、極めて情緒的かつシリアスな感情を纏っているように見えてしまう自分がいて、抗いがたい魅力を感じています。多くの人が一生の中で経験するであろう、でも胸に秘めたままの言葉にならない気持ちを表現してくれている作家だと思います。

亜鶴《真夏の通り雨》2020

 

出口雄樹

 1986年生まれ。福岡県出身、京都府在住。出口さんは、ストリート・日本画など多彩なバックグラウンドを持ち、東洋の絵画と西洋のポップアートのエッセンスの融合を独自のスタイルで表現する作家です。もしかすると、以前星野源のepのジャケットを手掛けたことでご存知の方もいるかもしれません。モチーフなどに彼が育ってきた町や触れてきた日本の歴史・伝統を意図的に取り入れた上で、そこにとどまらず、過去と現在、アジアと欧米などとの文化的なつながりを模索していく真摯な姿勢が、ひと目で彼の作品だとわかる個性を作品に与えています。一昨年までNYを拠点に活動していたため、日本での展示の機会はまだ少ないですが、今年は国内で複数の個展のほか、どうなるかはわかりませんが海外の美術館での展示も予定されているようです。個人的には、近年台頭している新しい日本画表現の可能性を広げていく作家のひとり、というよりもそういったジャンルの壁を飛び越えていく存在だと思っています。海外の市場で揉まれた、完成度の高い作品に注目です。

出口雄樹《Still Alive》2020

コレクター03: 吉田昌哉

城愛音

 今回、吉田が推薦させて頂きました城愛音さんです。城さんの作品の推しポイントは、なんと言っても美しいグラデーションの効いた太い線です。作品中には人物が描かれていて、人物像を取り囲む様に、あるいは放射上にグラデーションの線が走ります!まるで7色の水晶の洞窟の中に迷い込んだ様です。最近は、グラデーションの美しさが更に増して、まるで美味しいカクテルのよう。どうぞ皆さま味わってください。

城愛音《Portrait2020N》2020

 

黒川岳

 私のコレクションは、基本的に絵画作品です。何故?やはり現代アートの中では、自分にとって理解可能なことが多いからでしょうか!そのような中、今回推薦させて頂きました黒川岳さんはパフォーマンスがメインの作家さんです。アート大阪で映像を拝見したり、Instagramでパフォーマンスの様子を楽しく拝見しているのですが、黒川さんのアートは、私の理解出来る範疇をはるかに超えています。頭の中ってどうなってるんだろう?身体を吊るされて銅鑼を鳴らす!大きな竹の束を持ってビルの屋上でのパフォーマンス!真面目に全身全霊を掛けてされてる姿に感じるものがあります。皆さま、どうぞ黒川岳ワールドをお楽しみください。

黒川岳《人々の触れる穴》パフォーマンス用オブジェクト/パフォーマンス記録映像 2020

 

中田有美

 2021年、吉田が推薦するアーティストは、中田有美さんです。私のコレクションは、色使いが美しく綺麗で、ずーっと観ていて心地よい作品が多いです。元々日本画が好きでカラーリストと言われた小野竹喬の大ファンです。中田さんの作品は、植物、幾何学的なものが何層にも折り重なるように、とても鮮やかな色で描かれていて、不思議な領域を創り出しています。鮮やかな色は、私には、しんどい絵になってしまう事もあるのですが、中田さんの作品は、ずっと観ていても心地好く、安らぎと温かさを感じます。どうぞ、是非皆さんもご鑑賞ください。

中田有美《Pintless focus #1》

 

黒宮菜菜

 今回、吉田が推薦させて頂きました黒宮菜菜さんの作品ですが、困りました!何が困るって、黒宮さんの作品ほど、言葉や画像で説明したり、良さを分かって貰うのが難しい作品は無いと思うんです!もちろん色使いも綺麗で素晴らしい絵なんですが、見ていると不思議な事に絵の中に吸い込まれてしまうんです!上手い例えが浮かびませんが、あえて言うなら寝る時にふっと身体が無重力状態になる不思議な感じでしょうか!私はそれで購入しました。皆さま、その不思議感覚を是非感じてみてください。 

黒宮菜菜《アメノミナカヌシ、タカミムスヒ、カムムスヒ》2020

コレクター3名による座談会の記事はこちらから

編集部

Information

Collectors’ Collective vol.4 Osaka

会期:2021年1月22日(金) 〜2月20日(土)
会場:Tezukayama Gallery
住所:大阪府大阪市西区南堀江1-19-27山崎ビル2F
電話番号:06-6534-3993
開館時間:12:00〜19:00 
休館日:日、月、祝日
料金:無料
[協力] FINCH ARTS / Gallery Nomart / MIKIKO SATO GALLERY / TEZUKAYAMA GALLERY / WAITINGROOM