スウェーデン人画家、ヒルマ・アフ・クリント（Hilma af Klint）の作品集。作家、講師、美術史家であり彫刻家でもある、ヒルマ・アフ・クリント研究者のオーケ・ファント（Åke Fant）が1989年に初版を刊行した、作者にまつわる先駆的な論考をまとめた著作の英訳版。

ストックホルムの「スウェーデン王立美術院（Royal Swedish Academy of Fine Arts）」で学び、その後20年にわたり絵を描き続けた作者は、1906年に抽象的な視覚言語を用いた作品を制作し始めた。その後、巨大なスピリチュアル的神殿の一部として展示されることを意図した大型抽象絵画シリーズという大作に残りの人生を捧げた。作者は、スピリチュアリズム（心霊主義）や、神智学作家のヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー（Helena Petrovna Blavatsky）やアニー・ベサント（Annie Besant）、人智学を創唱し透視能力を主張するルドルフ・シュタイナー（Rudolf Steiner）など、同時代のオカルト的な資料に基づいて作品を制作した。

本書は、オーケ・ファントの原文、キュレーターのラース・ニトヴェ（Lars Nittve）の序文に加え、「Axel and Margaret Ax:son Johnson Foundation」の代表であるクルト・アルムクヴィスト（Kurt Almqvist）が新たに序文を寄せている。初版刊行当時から更新された年表、フルカラー収録の作品群、そして美しいクロス装丁は、作者とその作品への関心がかつてないほど高まっている今、その後の研究においてもなお重要であり続けるオーケ・ファントの研究の重要性がさらに強調されている。