¥ 5,720 (税込)
フランス人グラフィックデザイナー、ファネット・メリエ(Fanette Mellier)とクレモン・ヴォシェ(Clément Vauchez)による作品集。
本書は、富士山を捉えた36点の写真をまとめた一冊である。葛飾北斎の「冨嶽三十六景」へのオマージュであると同時に、そこから着想を得つつ、その先へと踏み出している。ループとして在ることを構想された本書は、この火山の周囲をめぐる旅へと読者を誘い、視点を重ねさせ、スケールを移り変わらせていく。写真の並びは旅の時系列に沿っており、日本の読み方である右から左へのページ構成を採用している。ページをめくるごとに、色彩は少しずつ姿を現していく。これは刷りの進行にあわせてインクを変化させる実験的な印刷プロセスが為すものであり、1冊ごとにその様が異なる唯一の本として存在する。
本書は、ひと巡りして始まりへと戻る、ループのように読むことができる本である。原理はごく単純だが、かたちにするまでにはかなりの時間を要し、そして一見簡素でありながら、語るべきことは多い。
「日本についての本をつくりたいと、私は長いあいだ思っていた。夫のクレモン・ヴォシェとともに何度か訪れたこの国に、私たちはふたりとも惹きつけられている。東京に滞在し、本の主題について思いをめぐらせていたとき、富士山がふと頭に浮かんだ。ちょうど日本の風景のなかに、ときおり思いがけず富士山が姿を現すように。
そのアイコンとしての存在は、風景のなかに実在する山が呼び起こす魅力を少しも損なうものではない。山の周囲をめぐることができ、山はつねに同じでありながら、異なる視点から眺めると姿を変える。そのことは、本の前提として興味深いものに思えた。それはまた、本を組み立てるための基準点ともなりうるものだった。
私はまた、北斎の象徴的な作品『冨嶽三十六景』からも着想を得た。その視覚的な力は、日本の風景に対する私の見方を深く豊かにしてきた。繰り返されるモチーフと描写のバリエーションをともに体現する、北斎の革新的な風景へのアプローチ、そして版画に用いられたプルシアンブルーの顔料もまた、私たちのプロジェクトのインスピレーションの源となった。
当初は、フランスの出版社『Éditions du Livre』から刊行してきたほかの作品の延長として、富士山をドローイングで描くつもりだった。しかし、その単純な形は私のミニマルなドローイングにあまりに近く、現実の繊細な揺らぎを再現するには適していなかった。月日が経つにつれ、本書の風景は写真によって捉えられるべきだということが明らかになっていった。そうすることで、風景は富士山をめぐる旅の現実から立ち上がるものにもなる。
私はクレモンに、ともに本をつくってほしいと頼んだ。クレモンは何よりもまずグラフィックデザイナーだが、厳格な写真の実践も続けてきた。ただ、それを本のかたちで本格的に発表したことはなかった。個人的な冒険と、新たな出版の経験とをともに分かち合う、またとない機会に思えた。
プロジェクトの写真の側面を引き受けることで、クレモンはこの冒険に加わり、富士山をめぐる私たちの旅を導いた。
本の構成と、そのなかで富士山がどのように現れるかは、早い段階で私が決めていた。また、技術的な要件の観点から作品の特性も定めており、それが今度は制作のプロセスを生み出していった。11 × 16 cmという小さな判型からは、1枚の用紙に刷られる32ページの本文が導かれる。すべてのページが同時に印刷されるということは、私にとって大きな意味を持っていた。
さらに、本文のページ数に、作品の始まりと終わりを構成する2つの4ページ折を加えることで、36の風景を収めることが可能になり、北斎とぴたりと一致した。冒頭と末尾の4ページの折は本文を挟み込み、本は糸の見えるコプティック製本で綴じられている。
私は、本が終わりから始まるようにしたいと考えた。西洋の本の裏表紙が、日本の本の表(おもて)表紙となる。これによって、日本の本でもっとも重要なページ(フランスの出版界で『美しいページ』と呼ばれるもの)、すなわち表紙を開いて最初の左ページに、富士山が現れることになる。写真のフレーミングもまたこの独特な形式に合わせる必要があり、山は画面の中心から外して撮影しなければならなかった。
西洋の出版の慣習からすれば『逆向き』に進むことは、山をめぐる私たちの旅や、左側通行とも響き合っていた。本能的な感覚は揺さぶられ、運転の習慣も本をデザインする習慣も、反転させられたのである。
本のなかの写真の順序は、撮影された順序をなぞっている。私たちは山の周囲を反時計回りに旅した。
写真のフレーミングは明確に定められていたが、一方で、富士山のはかない性質が風景のなかに現れることも重要だった。山は光の移ろいや雲の動きによって、一瞬にして現れては消える。私たちの旅は、蝶を捕まえようとするようなものだった。状況の多様さが、万華鏡のような効果を生み出している。
また、4色印刷によって写真を再現する際の技術的な慣習にも取り組みたいと考えた。クレモンは、印刷工程にも反映される色版の分解方法を綿密に練り上げた。
色インクで刷られる最初の折では、写真は単にグレースケールに変換されたわけではない。4色プロセスを構成する各版を1枚ずつ変換し、個別に処理したうえで重ね合わせ、青の単色イメージをつくり出している。
2つ目の折では、4つの版のうち3つが統合され、残る1版は特色で刷られている。色を扱う私たちの方法は、本が展開するにつれ、段階的な層として姿を現していく。青に少しずつ色が加わって風景を浮かび上がらせ、最後のセクションでは幅広いスペクトルのイメージへと至る。色はすぐには示されず、イメージの層が1枚ずつ明かされていくかのように、少しずつ読者の前に現れる。
この重ね合わせの技法は、オフセット印刷によるイメージ再現の慣習的な工程の一部である。しかし私は、版へのインクの盛り方をまったく実験的な方法で行いたいと考えた。それによって、イメージの再現に新たなかたちで取り組むことができる。
刷り出しの準備における技術的な側面が、本書への私の関わりのなかで、主要な芸術的要素となった。重ねる順序にもとづいてインク壺への色の配分を計画し、刷りの進行を通じてヴァリエーションが生まれるようにした。30色以上をあらかじめ用意し、計画に沿ってインク壺に振り分けた。そのうえで刷り出しのあいだに即興的に手を加え、インクの具合を調整して多様なニュアンスを生み出した。こうしたインクの変化に加えて、裏面を刷る前に用紙をランダムに混ぜた。そのため、表と裏の組み合わせは刷り紙1枚ごとに異なるものとなった。
出版者のアレクサンドル・シェーズ(Alexandre Chaize)は、本づくりの全過程を通じて綿密に支えてくれた。製本の前にはページのランダムな配分を確認し、1冊1冊が唯一のものとなるよう確かめている。本の始まりと終わりの表紙に現れるさまざまな色の組み合わせもまた、その一点ものとしての性質を際立たせている。
本書のデザインは厳密だが、同時に、風景や光、インクを通じて、予測できないものにも大きな場所を与えている。本書は読者に、印刷工程の偶然に身をゆだねながら視線を自由にさまよわせ、日本の幻想的な色彩を味わうよう誘う。」
-ファネット・メリエ
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| 取り扱い | twelvebooks |
|---|---|
| サイズ | 16.0 x 11.0 x cm |
| 重量 | 1.0kg |
| 商品コード | 1100059499 |
| 出版 | ÉDITIONS DU LIVRE |
| 著者 | Fanette Mellier, Clément Vauchez |
| ISBN | 9791090475427 |
| 配送までの期間 | プレオーダー *11月入荷予定 |
| カテゴリー | |
| 送料 | ¥550(税込) |
| 購入条件 |