アメリカ人コンセプチュアルアーティスト、ローレンス・ウェイナー（Lawrence Weiner）の作品集。現代美術と建築に関する出版活動を行うガブリエレ・デッテラー（Gabriele Detterer）は、自身のライブラリーとこれまで蒐集したウェイナーによって手がけられたアーティスト・ブック、カタログ、ポスター、展覧会の告知、エフェメラのコレクションを掘り下げた。本書の表紙はウェイナーが手がけた簡潔なデザインで仕上げられており、コンセプチュアル・アートの第一人者である人物の独創的なイマジネーションと決断力を知る道筋へと読者や鑑賞者を誘っていく。ウェイナーは、コンセプチュアルなアイデアをより多くの人に伝える手段として、長きに渡り印刷出版物を生み、世に送り出してきた。

デッテラーが自身のコレクションを見直すきっかけとなったのは、引っ越しのために本を梱包しなければならなくなったことだった。梱包を解くという行為は、ウェイナーの芸術が持つ触覚的・視覚的な性質が本の形で体験できるという喜びをさらに強固なものとした。蒐集への情熱が奏でるこの物語には、ウェイナーの本作りの背景を明らかにするように二者の出会いが深く刻まれている。ヴィジュアルアーティストであるローラ・J・パジェット（Laura J. Padgett）が写した23枚の写真も収録されており、そこではコレクションの中から取り出されたいくつもの作品が表紙を開き、ページが展開されている。

コンセプトとテキストはデッテラーが手がけ、表紙は2021年2月にウェイナーが手がけたものを使用。写真は前述のようにローラ・J・パジェット、グラフィックデザインはマッテオ・モレッティ（Matteo Moretti）が担当する。

版元の「ゾーナ・アーカイヴス（ZONA ARCHIVES）」はイタリア人アーティスト、マウリツィオ・ナンヌッチ（Maurizio Nannucci）が1968年にフィレンツェで設立した出版社であり、1974年から1985年まで志を同じくするアーティスト達によって運営された非営利スペース「Zona」と共にあった。1985年以降、同社は今日に至るまでエディションとマルチプルの出版を続けている。