本作「桃様と戌様」は、日本文化に深く刻まれた「不完全の美」を主題にしています。桃は古来より再生や魔除けの象徴として信じられ、犬は人と異界の境を守る存在として祀られてきました。私はこの二つの象徴を、あえて穴や欠けを抱えた造形の中に据えました。欠落は損失ではなく、観る者の想像を呼び起こす余白として機能します。守護や再生といった価値ですら完全には成立せず、不完全なまま持続する。そこにこそ美や真実が宿るのではないかという問いです。

禅の無常観や茶の湯の侘び寂びに見られるように、日本人は「欠け」を肯定し、そこに豊かさを見いだしてきました。災害や敗戦など、歴史的に繰り返される断絶の経験を経ても、日本人は完全性を志向するよりも「受け入れ、補い、更新する」態度を選び続けてきたのです。本作はその文化的感性を、犬と桃という象徴に託し、現代において再提示する試みです。欠落を抱えながらも続いていく生をどう肯定できるか?その問いを、作品を通して観者に委ねています。

 

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若佐慎一

桃様と戌様

2025

¥ 220,000 (税込)

本作「桃様と戌様」は、日本文化に深く刻まれた「不完全の美」を主題にしています。桃は古来より再生や魔除けの象徴として信じられ、犬は人と異界の境を守る存在として祀られてきました。私はこの二つの象徴を、あえて穴や欠けを抱えた造形の中に据えました。欠落は損失ではなく、観る者の想像を呼び起こす余白として機能します。守護や再生といった価値ですら完全には成立せず、不完全なまま持続する。そこにこそ美や真実が宿るのではないかという問いです。

禅の無常観や茶の湯の侘び寂びに見られるように、日本人は「欠け」を肯定し、そこに豊かさを見いだしてきました。災害や敗戦など、歴史的に繰り返される断絶の経験を経ても、日本人は完全性を志向するよりも「受け入れ、補い、更新する」態度を選び続けてきたのです。本作はその文化的感性を、犬と桃という象徴に託し、現代において再提示する試みです。欠落を抱えながらも続いていく生をどう肯定できるか?その問いを、作品を通して観者に委ねています。

 

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取り扱い CANDYBAR Gallery
エディション オリジナル
サイズ 41.0 x 21.0 x 20.0 cm
素材 杉に漆、アクリル絵具
商品コード 1100047638
配送までの期間 2〜3週間
購入条件