大河原愛はニューヨークに滞在したことがきっかけとなりコンテンポラリーアートへと転向しました。主に人物の背中を描くことで、皮膚から浮かび上がる骨格の美しさを表現していましたが、近年はフォルムが美しいと感じる動物をモチーフにしたシリーズも制作しています。自身が幼少期に受けた心の傷を癒すように、弱い者や傷ついた者に寄り添いたいという願いから描かれる作品には、どんななかにも光や希望があることへの祈りが込められています。
このたび、本展で発表する新作を、「OIL by 美術手帖」でもあわせて販売いたします。人間や動物の肉体からあふれる生命力と、自身の感覚を表現した鮮やかな色彩が交わることで、抽象と具体が混ざりあう大河原の作品世界をオンラインでもお楽しみください。
《遠い声 11》(2024)
《内なる音に耳を澄まして 2》(2024)
《深層のNoise 17》(2024)
アーティストステイトメント
私は、生きづらさを感じやすい現代において、精神の光と闇を主なテーマに制作しています。 今回の展示タイトル「静けさの内に留まる羊は、いかにして温もりを手に入れたか」は不均衡で不完全な人の存在、温もりを追い求めながらも孤独に身を置かざるをえない人の姿や、傷を抱えながらも微笑む人の存在に少しでも寄り添いたくて紡いだ言葉でした。 私は、すべての人が持っている痛みや繊細さみたいなものに、光を当てたいのです。
大河原愛
Artist Profile
大河原愛
1979年東京都生まれ。2002年に武蔵野美術大学造形学部日本画学科を卒業、04年に同大学大学院造形研究科美術専攻日本画コースを修了し、08〜10年までアメリカ・ニューヨークに滞在。フランシス・ベーコンやエゴン・シーレなどの近代絵画や、アメリカの現代美術に影響を受ける。繊細でありながら、不完全で不均衡なフォルムを特徴とした人物画や、ノスタルジックなコラージュ、ドローイング作品を制作。目に見えない事物や、人の心の闇と痛み、そこから滲み出る光を表現する。近年の個展に、「静けさの内に留まる羊はいかにして温もりを手に入れたか」(新宿高島屋 美術画廊、東京、2023)、「Spectrum」(松坂屋名古屋店 美術品売場、愛知、2020)、「鼓膜に残る静寂を、優しさに変えるすべについて」(新宿髙島屋 美術画廊、東京、2019)など。海外では、08年よりニューヨークのMonkdogz Urban Art Galleryなどアメリカのギャラリーでも数多く展示を行い、 11年にアメリカとポートランドのHellion Galleryで個展を開催。東京、北京、上海、マレーシア、シンガポール、ニューヨーク、台湾のアートフェアにも出展している。作品が芥川賞作家の辺見庸、鹿島田真希、辻原登、桐野夏生の書籍の装丁に起用。13年、アメリカのOvercup press社が出版した画集『The Tall Trees of Tokyo』の日本人紹介アーティストのひとりに選ばれる。近年は世界配信されるNetflixドラマや映画に作品を提供するほか、2020年にはBSフジテレビ「ブレイク前夜」に出演し、国内外で注目を集めている。
Information
大河原愛個展「静けさの内に留まる羊は、いかにして温もりを手に入れたか III」
会期:2024年11月30日~12月24日 |