門倉太久斗の表現は、2軸の活動をベースにしています。ひとつは愛するアニメ、プリキュアをモチーフとしたネックレスを制作、「22世紀ジェダイ」としての活動。そしてもうひとつが絵画作品を発表する「門倉太久斗」名義での活動です。花、プラモデル、男性器といったモチーフについて考察を続けながら絵画での表現を追求しています。門倉は美術大学を卒業後、コム デ ギャルソンで10年ほどファッションの仕事に従事しますが、そこではいまにもつながる「『創作を続ける目的』と対峙する日々だった」と振り返ります。
当時、パタンナーとしてファッションショーのランウェイに登場する洋服を手がけていた門倉は日々「新しい、見たことないものを」というリクエストに応えるため様々なアイデアを提案。布を薬品で加工して立体造形したり、テキスタイルを硫酸で溶かしたり、美術大学での経験を活かしながら組み合わせの独自性によりアプローチを続けました。ショーは、年に2回だけ幕が開いて、その日だけ、あの世とこの世の境目がなくなるような非日常感。異様な服を着たモデルたちも美しいのか、よくわからない。その感じが、例えばナマハゲのような来訪神の考えと似ていると気づき、「自分も道化のように人々の生活や日常を掻き乱しにくる存在のように表現活動を続けようと思った」と話します。また、「新しいかたち」を追求してショーの洋服をつくり続けた門倉が最終的に行き着いたのが「身体そのものの変形」。1990年代に川久保玲が発表した「ボディ・ミーツ・ドレス ドレス・ミーツ・ボディ」コレクション(*1)から着想を得て、絵画では、極端なくびれや拡張など身体の可変性を描くことができると感じ、自身のルーツであるファッションを絵画に展開していきます。
また、制作するなかで「良い絵」についても考察を続ける門倉。門倉にとって「良い絵」の基準は絵画でもイラストレーションでも、何にこだわりを持って美意識を見出しているかを感じられること。人それぞれの「フェティシズム」に興味があるという門倉は、今回のグループ展ではキュレーションを担当、自身も作品を発表。表現の形態は様々であれ、門倉が独自の美意識を感じた5名の作家とともに開催します。オンラインでは「男性性」と「花」をモチーフにした門倉の「フェティシズム」を感じる作品を発表します。
*──通称「こぶドレス」と呼ばれるドレス。「身体と服の相互の束縛を解き放つ」というコンセプトで新たな造形美をつくり出し、世界に衝撃を呼んだ。
《Penis Flowers ♯6》(2024)
《Penis Flowers ♯7》(2024)
※数ヶ月以内に他作品の追加出品を予定しております。
プロフィール
門倉太久斗
埼玉県生まれ、武蔵野美術大学造形学部空間デザイン科ファッション専攻卒業。コム デ ギャルソンにパタンナーとして従事しながら、愛するアニメ、プリキュアをモチーフとしたネックレスを制作、「22世紀ジェダイ」としてSNSで発表し注目を集める。独立後、「門倉太久斗」名義で発表する絵画作品では、「やってくるもの」をテーマに表現を追求。独自の形状をした植物や人物などをモチーフに、絶妙な構図と色の組み合わせで画面いっぱいに描き、中毒的な魅力をもって鑑賞者を引きつける。
Information
「超アジテート・ムジナ穴」
参加作家:unpis、大河紀、大津萌乃、門倉太久斗、カワグチタクヤ、millitsuka 会期:2024年2月16日~3月3日 |