リチャード・タトル
Richard Tuttle
リチャード・タトルは1941年アメリカ・ニュージャージー州生まれ。ポスト・ミニマリズムを代表するアーティストのひとり。ハートフォード市のトリニティ大学で哲学と文学を学び、1963年に卒業。65年、24歳のときにアーティスト活動を開始し、ベティ・パーソンズギャラリー(ニューヨーク)で初個展を開催。キャンバスに木の切り抜きを貼付した《コンストラクテッド・ペインティング》(1965)、壁に設置したワイヤーとその影、ドローイングの線で構成される「ワイヤー・ピース」シリーズ(1970〜73)など、絵画とも彫刻とも言える、あるいはどちらとも区別できない作品を発表する。
75年、ホイットニー美術館での個展では、スケールの大きい作品が時代の潮流であったなか、短いロープ片をピン留めした小作品「ロープ・ピース」シリーズなどを床近くに展示することで作品と空間との関係を問い直し、批判と賞賛を浴びる。以降もひとつの概念にとらわれることなく、木片や紙、ワイヤーや金属片といった身近にあって壊れやすい素材を使い、繊細な彫刻、ペインティング、ドローイング、インスタレーション、版画、コラージュ作品、また言語を用いた作品を制作。詩的で慎ましやかな作品に多様な意味を込めて鑑賞の可能性を広げ、見る者に感動や気づき、心が自由になる感覚をもたらそうと表現している。いっぽう、近年ではスケールの大きい彫刻を探求する「システムズ」シリーズなどにも取り組む。
2005〜07年にかけて大回顧展「The Art of Richard Tuttle」がサンフランシスコ近代美術館、ホイットニー美術館ほかアメリカ国内を巡回。2014年、テート・モダンでの個展「I Don’t Know, Or The Weave of Textile Language」(ホワイトチャペルギャラリーとの同時開催)では、布を使用した巨大彫刻をタービンホールに展示し、大きな反響を呼んだ。これまで、ヴェネチア・ビエンナーレ、ドクメンタ、ミュンスター彫刻プロジェクト、ホイットニー・ビエンナーレなどの国際展にも多数参加。有数のアートコレクター、ヴォーゲル夫妻のドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー』(監督=佐々木芽生)に登場したことでも知られている。