アメリカ人アーティストでフォトグラファー、トレント・デイヴィス・ベイリー(Trent Davis Bailey)の作品集。

1989年に発生した飛行機事故で母を亡くしたひとりの息子と、その亡き母との限られた関係を軸に、自ら夫となり父となった息子の新たな人生を重ね合わせながら描く、世代を超えた家族の物語。時間軸を直線的に追うのではなく、物語性を重視した構成により、悲しみ、喜び、愛、そして喪失の感情が交錯する作者の歩みを辿り、過去が常に現在とともにあることを示唆している。

数十年に亘る家族のアーカイブを背景にした追悼の書として、本書は作者が過去10年間に制作した写真やテキストに加え、1960〜70年代に母が描いた予兆的ともいえるドローイングや絵画、1980年代から1990年代、そして2020年代に撮影された家族写真、1989年当時のアイオワ州の新聞社アーカイブから再構成した報道写真、さらにアイオワ州を舞台としたハリウッド映画2作品のスチル写真やホームビデオ映像を、1990年代製ブラウン管テレビに映し出して再撮影したイメージなど、多様な素材を組み合わせて構成されている。

作者は当初、1989年にアイオワ州スーシティで墜落したユナイテッド航空232便事故で母を亡くした悲劇を追悼し、その死と向き合うことを目的として本作に取り組んだ。しかし、事故から30年後の2019年、自身が父親となったことをきっかけに、本書の構想は大きく変化した。その結果生まれたのは、家族アルバムやスライドショーといった従来の形式を超え、強い感情を湛えながらも複雑さを抱え続ける一冊である。作者は本書を「写真による追悼碑であり、記憶のアトラス」と位置づけ、自身が幼少期に世界中のメディアの注目を浴び、生存者として父や兄弟たちとともに「事故の生還者」の物語の一部として語られてきた経験と向き合っている。事故の前後を含むさまざまな時代のイメージを集積することで、本書は母を失ったアメリカのある家庭に生まれた深い空白を見つめ、その先に残された悲しみやトラウマの断片を、重い哀悼の念とともに、ユーモアや希望を織り交ぜながら描き出している。

作者にとって、この極めて私的な作品群においては、誰が作者であるのかという境界を曖昧にすることが重要であった。本書は幼少期の痛ましい記憶と父親としての現在を重ね合わせながら、写真と真実の関係、イメージと記憶の相互作用、さらにはハリウッド映画や報道写真における表象の倫理について問いかける。ひとつの悲劇的なニュースの背後には、その出来事によって人生を永遠に変えられた人々が存在することを思い起こさせる、時間と記憶を横断する一冊である。

編集・構成:セシル・ポワンブフ=コイズミ(Cécile Poimboeuf-Koizumi)
デザイン:セシル・ポワンブフ=コイズミ、ペリーヌ・セール(Perrine Serre)

英語、フランス語併記。

MORE

¥ 13,200 (税込)

アメリカ人アーティストでフォトグラファー、トレント・デイヴィス・ベイリー(Trent Davis Bailey)の作品集。

1989年に発生した飛行機事故で母を亡くしたひとりの息子と、その亡き母との限られた関係を軸に、自ら夫となり父となった息子の新たな人生を重ね合わせながら描く、世代を超えた家族の物語。時間軸を直線的に追うのではなく、物語性を重視した構成により、悲しみ、喜び、愛、そして喪失の感情が交錯する作者の歩みを辿り、過去が常に現在とともにあることを示唆している。

数十年に亘る家族のアーカイブを背景にした追悼の書として、本書は作者が過去10年間に制作した写真やテキストに加え、1960〜70年代に母が描いた予兆的ともいえるドローイングや絵画、1980年代から1990年代、そして2020年代に撮影された家族写真、1989年当時のアイオワ州の新聞社アーカイブから再構成した報道写真、さらにアイオワ州を舞台としたハリウッド映画2作品のスチル写真やホームビデオ映像を、1990年代製ブラウン管テレビに映し出して再撮影したイメージなど、多様な素材を組み合わせて構成されている。

作者は当初、1989年にアイオワ州スーシティで墜落したユナイテッド航空232便事故で母を亡くした悲劇を追悼し、その死と向き合うことを目的として本作に取り組んだ。しかし、事故から30年後の2019年、自身が父親となったことをきっかけに、本書の構想は大きく変化した。その結果生まれたのは、家族アルバムやスライドショーといった従来の形式を超え、強い感情を湛えながらも複雑さを抱え続ける一冊である。作者は本書を「写真による追悼碑であり、記憶のアトラス」と位置づけ、自身が幼少期に世界中のメディアの注目を浴び、生存者として父や兄弟たちとともに「事故の生還者」の物語の一部として語られてきた経験と向き合っている。事故の前後を含むさまざまな時代のイメージを集積することで、本書は母を失ったアメリカのある家庭に生まれた深い空白を見つめ、その先に残された悲しみやトラウマの断片を、重い哀悼の念とともに、ユーモアや希望を織り交ぜながら描き出している。

作者にとって、この極めて私的な作品群においては、誰が作者であるのかという境界を曖昧にすることが重要であった。本書は幼少期の痛ましい記憶と父親としての現在を重ね合わせながら、写真と真実の関係、イメージと記憶の相互作用、さらにはハリウッド映画や報道写真における表象の倫理について問いかける。ひとつの悲劇的なニュースの背後には、その出来事によって人生を永遠に変えられた人々が存在することを思い起こさせる、時間と記憶を横断する一冊である。

編集・構成:セシル・ポワンブフ=コイズミ(Cécile Poimboeuf-Koizumi)
デザイン:セシル・ポワンブフ=コイズミ、ペリーヌ・セール(Perrine Serre)

英語、フランス語併記。

MORE

取り扱い twelvebooks
サイズ 28.5 x 21.5 x cm
重量 1.0kg
商品コード 1100056476
出版 CHOSE COMMUNE
著者 Trent Davis Bailey
ISBN 9791096383603
配送までの期間 ご注文確定後、2-7日以内
カテゴリー
送料 ¥770(税込)
購入条件