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アメリカ人アーティスト、オスカー・トゥアゾン(Oscar Tuazon)の作品集。

2012年6月から10月にかけてスイスの現代アートセンター「ジュネーヴ現代アートセンター(Centre d'Art Contemporain Genève)」で開催された展覧会に伴い刊行された。本書は、作者による210点のドローイングとテキストを収めたアーティストブックである。

作者は、自身の制作を子どもの頃の遊びの延長のように捉えている。木の小屋をつくったり、森を探検したりするのと同じくらい自然な行為として作品に取り組むのである。作者は建築という枠組みに踏み込むことはなく、常に制約の外側にとどまりながら、本能に従い場所を一時的に自らの生活空間として占有する自由を守り続ける。制作は、自身の身体や動作の延長であり、組み立ての身振りやプロセスそのものが作品の不可欠な要素となる。それは、場所の占有や実験といった、いわば「現実の経験」として理解されるべきものである。作者の2010年の刊行物『I Can’t See』に収められたインタビューでは、作者は「私は自らの生命と欲求を備えた、ひとつの“生きているもの”をつくりたい」と語っている。

ここで問われているのは彫刻でもインスタレーションでもなく、物語化や模倣、象徴化でもない。作者の構築物は、展示空間の制約を超えて生活様式を移し替える、経験的な実践の結果として現れる。それらは遊牧的な精神を宿し、自然との共生を求めて進む入門的な遍歴へと近づき、しばしば生存の境界に触れる。近年の3つの個展に合わせて発表されたテキスト「Leave Me Be」において、作者は現実と想像の境界を曖昧にした、長く荒々しい旅路を描いている。ドラッグ、セックス、敵対的な自然、完全な孤独のなかで破滅へと走り続け、最後に一軒の家、自らの家を見いだす。それは自身のアイデンティティと作品のメタファーでもある。「そこへ着くのに7日かかった。私は窓をこじ開けて中へ入った。暗く、ひんやりしていて、天井から水が滴り落ちていた。それが終わりだった。それがすべてであり、それこそが私に属するものだった」と語る。

作者の問題意識は、広大な自然とアメリカ文学・文化との結びつきを想起させる。未開の世界を讃え、自然との調和を求める姿勢から、19世紀の抗議運動、アナーキズム、リバタリアニズムに至るまで、さまざまな思想と共鳴している。自給自足の生活を実践した思想家ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(Henry David Thoreau『ウォールデン 森の生活(Walden or Life in the Woods)』)や、北方を舞台にしたジャック・ロンドン(Jack London『野性の呼び声(The Call of the Wild)』)、さらにはビート・ジェネレーションのジャック・ケルアック(Jack Kerouac)やウィリアム・S・バロウズ(William S. Burroughs)との関係も読み取れる。より近年では、ガス・ヴァン・サント(Gus Van Sant)の映画『ジェリー(Gerry)』、ジョン・クラカワー(Jon Krakauer)が記したクリストファー・マッカンドレス(Christopher McCandless)の旅の記録と、ショーン・ペン(Sean Penn)による映画『イントゥ・ザ・ワイルド(Into the Wild)』、さらにアン・リー(Ang Lee)による『ブロークバック・マウンテン(Brokeback Mountain)』も挙げられる。アイルランドの作家マイケル・コリンズ(Michael Collins)が描く、アメリカ的なロード神話と距離を取りながらもその影響を強く受けた小説群も参照できるだろう。

道は自己発見のための手段であり、自然の中での孤独は社会的組織から離れ、自由への欲求や市民的不服従を生み出すきっかけとなる。作者はソローのような先駆者の思想を経て、20世紀を通じてコミューン運動、平和主義、急進的アナーキズム、テッド・カジンスキー(Ted Kaczynski、ユナボマー)のような過激な個人主義、そして近年のより集団的な反資本主義、オルター・グローバリズム、環境主義へと展開してきたのである。

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オスカー・トゥアゾン

WORKING DRAWING [ENGLISH EDITION / SIGNED / NUMBERED]

2012

¥ 121,000 (税込)

アメリカ人アーティスト、オスカー・トゥアゾン(Oscar Tuazon)の作品集。

2012年6月から10月にかけてスイスの現代アートセンター「ジュネーヴ現代アートセンター(Centre d'Art Contemporain Genève)」で開催された展覧会に伴い刊行された。本書は、作者による210点のドローイングとテキストを収めたアーティストブックである。

作者は、自身の制作を子どもの頃の遊びの延長のように捉えている。木の小屋をつくったり、森を探検したりするのと同じくらい自然な行為として作品に取り組むのである。作者は建築という枠組みに踏み込むことはなく、常に制約の外側にとどまりながら、本能に従い場所を一時的に自らの生活空間として占有する自由を守り続ける。制作は、自身の身体や動作の延長であり、組み立ての身振りやプロセスそのものが作品の不可欠な要素となる。それは、場所の占有や実験といった、いわば「現実の経験」として理解されるべきものである。作者の2010年の刊行物『I Can’t See』に収められたインタビューでは、作者は「私は自らの生命と欲求を備えた、ひとつの“生きているもの”をつくりたい」と語っている。

ここで問われているのは彫刻でもインスタレーションでもなく、物語化や模倣、象徴化でもない。作者の構築物は、展示空間の制約を超えて生活様式を移し替える、経験的な実践の結果として現れる。それらは遊牧的な精神を宿し、自然との共生を求めて進む入門的な遍歴へと近づき、しばしば生存の境界に触れる。近年の3つの個展に合わせて発表されたテキスト「Leave Me Be」において、作者は現実と想像の境界を曖昧にした、長く荒々しい旅路を描いている。ドラッグ、セックス、敵対的な自然、完全な孤独のなかで破滅へと走り続け、最後に一軒の家、自らの家を見いだす。それは自身のアイデンティティと作品のメタファーでもある。「そこへ着くのに7日かかった。私は窓をこじ開けて中へ入った。暗く、ひんやりしていて、天井から水が滴り落ちていた。それが終わりだった。それがすべてであり、それこそが私に属するものだった」と語る。

作者の問題意識は、広大な自然とアメリカ文学・文化との結びつきを想起させる。未開の世界を讃え、自然との調和を求める姿勢から、19世紀の抗議運動、アナーキズム、リバタリアニズムに至るまで、さまざまな思想と共鳴している。自給自足の生活を実践した思想家ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(Henry David Thoreau『ウォールデン 森の生活(Walden or Life in the Woods)』)や、北方を舞台にしたジャック・ロンドン(Jack London『野性の呼び声(The Call of the Wild)』)、さらにはビート・ジェネレーションのジャック・ケルアック(Jack Kerouac)やウィリアム・S・バロウズ(William S. Burroughs)との関係も読み取れる。より近年では、ガス・ヴァン・サント(Gus Van Sant)の映画『ジェリー(Gerry)』、ジョン・クラカワー(Jon Krakauer)が記したクリストファー・マッカンドレス(Christopher McCandless)の旅の記録と、ショーン・ペン(Sean Penn)による映画『イントゥ・ザ・ワイルド(Into the Wild)』、さらにアン・リー(Ang Lee)による『ブロークバック・マウンテン(Brokeback Mountain)』も挙げられる。アイルランドの作家マイケル・コリンズ(Michael Collins)が描く、アメリカ的なロード神話と距離を取りながらもその影響を強く受けた小説群も参照できるだろう。

道は自己発見のための手段であり、自然の中での孤独は社会的組織から離れ、自由への欲求や市民的不服従を生み出すきっかけとなる。作者はソローのような先駆者の思想を経て、20世紀を通じてコミューン運動、平和主義、急進的アナーキズム、テッド・カジンスキー(Ted Kaczynski、ユナボマー)のような過激な個人主義、そして近年のより集団的な反資本主義、オルター・グローバリズム、環境主義へと展開してきたのである。

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取り扱い twelvebooks
エディション limited edition of 130 copies
サイズ 23.0 x 19.0 x cm
重量 1.0kg
商品コード 1100049585
著者 Oscar Tuazon
ISBN 9782970117438
配送までの期間 ご注文確定後、2-7日以内
カテゴリー
送料 ¥770(税込)
購入条件

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