REVUE FAIRE – TO LOOK AT THINGS #54: THE DIRECTOR, THE GRAPHIC DESIGNER, AND THE PRINTER: PONTUS HULTÉN AND THE MAKING OF THE CATALOG, 1960-1973
2025
¥ 3,850 (税込)
フランス発、2017年に創刊したグラフィックデザイン誌『レヴュ・フェール(REVUE FAIRE)』。本誌は、ヨーロッパ全体、殊にフランスにおいて、グラフィックデザインの形態と活動にまつわる分析に特化した批評的な刊行物が少ない現状を嘆き、鑑みて作られた。グラフィックデザインスタジオ「Syndicat」と出版社「Empire」を主宰するデザイナー・デュオ、サシャ・レオポルド(Sacha Léopold)とフランソワ・ハーヴェゲール(François Havegeer)によって創刊、15冊を1シーズンとして発行している。
第54号は、スウェーデン人キュレーター、ポントゥス・フルテン(Pontus Hultén)を特集し、『The Director, the Graphic Designer, and the Printer』をタイトルに掲げ、1960年から1973年まで「ストックホルム近代美術館(Moderna Museet)」の館長を務めた功績を讃えフルテンが在任期間中に手がけた出版活動に光を当てている。
「ストックホルム近代美術館」や「ジョルジュ・ポンピドゥー国立芸術文化センター(Centre national d’art et de culture Georges Pompidou (CNAC-GP)、以下ポンピドゥー・センター)」をはじめ、数々の美術館を立ち上げてきた伝説的キュレーターとして知られるフルテンは、そのキャリアを通じて多くの書籍を刊行してきた。1960年代、スウェーデン初の近代美術館の館長に就任したことをきっかけとし、展覧会カタログというフォーマットに真正面から取り組み、自らデザインにも深く携わっていく。
美術史家でありキュレーターでもあったフルテンは、「ストックホルム近代美術館」や、1973年から1981年に館長を務めた「ポンピドゥー・センター」内の「国立近代美術館(Musée National d'Art Moderne)」など、複数の世界的主要美術館の立ち上げに関わった人物である。社会批評として、また芸術と生活の境界を曖昧にする全体的な体験として構想された展覧会によって、これらの美術館の歴史に深い爪痕を残し、その国際的な評価を確立した。1960年代の「ストックホルム近代美術館」で開催された幾つかの展覧会は、先駆的な存在として世に知られている。例えば、ニキ・ド・サンファル(Niki de Saint Phalle)、ジャン・ティンゲリー(Jean Tinguely)、パー・オロフ・ウルトヴェット(Per Olof Ultvedt)によるモニュメント的な彫刻作品「Hon」は、来場者が巨大な身体の膣部をモチーフとした開口部から内部へと入り込むことができるアイコニックな展示だった。「Modellen – för ett bättre samhälle」展では、子どもたちが美術館空間を探検しながら、作り変えることが促され、それが社会変革のメタファーとして提示された。同様に、「Poesin måste göras av alla. Förändra världen!」展では、来場者が展示の一部の制作に参加し、プログラムについての意見を伝えるために提示された電話番号へ連絡することができた。芸術をすべての人に開かれたものとし、日常生活に溶け込ませるために、フルテンは美術館の開館時間を延長した先駆的な人物のひとりでもある。料金設定の方針も、開かれた場と民主化への志向の一部を成しており、例えば1968年に同館で開催されたアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)による展覧会のカタログは、1ドルで販売されていた。
フルテンは、アーティスト、キュレーター、グラフィックデザイナー、出版社、著者、印刷業者を集め、大胆で常識に逆らうプロジェクトに取り組ませることで、自身が率いる美術館の視覚的世界をかたちづくっていった。こうしたコラボレーションは、従来のヒエラルキーを解体し、さまざまな役割を混交させ、ときに再発明し、あるいは単に消失させてしまうものだった。フルテン自身が実際にデザインや印刷を手がけることは稀であったものの、その影響力は創造プロセスのあらゆる局面において感じ取ることができる。継続的に協働した人物には、スウェーデンのグラフィックデザイナーであるフーベルト・ヨハンソン(Hubert Johansson)、ジョン・メリン&アンデシュ・エステルリン(John Melin & Anders Österlin/M&Ö)、ヨスタ・スヴェンソン(Gösta Svensson)らのほか、のちにはスイス人デザイナー、ジャン・ヴィドメル(Jean Widmer)やポーランド人デザイナー、ロマン・チェシェヴィッチ(Roman Cieślewicz)といった国際的なデザイナーも含まれている。
フルテンは、1つ1つの印刷物にはそれぞれ固有のキャラクターが与えられるべきだと考えていた。かたちには内容だけでなく、それを手がけるデザイナーの個性も反映し、見えないものに具体的なかたちを与えなければならない。各ドキュメントが持つ「オーラ」は、内容とかたちの緊密な結び付きから生まれる。題材に応じてフォーマットが調整され、伝えたいメッセージに沿って素材が慎重に選ばれ、印刷には当時もっとも先進的な技術が用いられた。そうした関係のなかで、常に「何が可能か」という境界を押し広げようとしていたのである。
フルテンのレガシーを通して一貫しているのは、喜びに満ち、アイロニカルで、自由闊達なアナーキズムであり、それはきわめて創造的でユートピア的な精神でもある。彼はダダイズムから着想を得て、芸術を現実を批評するための場として捉えていた。彼の仕事は、繊細なサインを張り巡らせながら、既存の慣習に問いを投げかける多様な視点を生み出している。
本号の著述はパリを拠点に活動するフリーランスのグラフィックデザイナー、マルー・メシアン(Malou Messien)が担当。彼女のデザイン実践と、印刷物やデザインオブジェへの情熱は、テキストやレクチャー、オンラインでの販売プラットフォームというかたちで共有されるコレクション制作へとつながっている。
フランス語、英語併記。
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| 取り扱い | twelvebooks |
|---|---|
| サイズ | 29.7 x 21.0 x cm |
| 重量 | 1.0kg |
| 商品コード | 1100048869 |
| 出版 | EMPIRE |
| ISBN | 9791095991809 |
| 配送までの期間 | ご注文確定後、2-7日以内 |
| カテゴリー | |
| 送料 | ¥770(税込) |
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