アメリカ人アーティスト、ジェームズ・タレル（James Turrell）の作品集。決定版ともいえる本書は、カリフォルニアのメンドータに在るスタジオで行われた制作から、現在制作中の大規模作品「ローデン・クレーター（Roden Crater）」まで、作者の素晴らしく多様で心躍る作品群の起源や原動力に光を当てている。

形を投影する対象が平らな壁面であれ、ギャラリー空間の角であれ、作者は「中へ入り、光を出迎えよ」と鑑賞者に常に呼びかけており、クエーカー教徒としての生い立ちを想起させる。実際、全作品が飛行、科学、心理学に関する人生経験、そして1960年代のロサンゼルスでの爆発的なアートシーンにおける主要人物としての経験から影響を受けている。

熟考されたエッセイと思考を明確にする作者のインタビューによってさらに引き立てられる本書は、初期の幾何学的な光を投影した作品から、プリント作品やドローイング作品、感覚遮断や一見無調整だと思われる色光を探求するインスタレーション、そしてホログラムを使った二次元の実験的な取り組みを通して、作者のキャリアをあらゆる側面から探る。さらに、アリゾナ州フラッグスタッフ近郊でのサイトスペシフィックな作品「ローデン・クレーター（Roden Crater）」を深く掘り下げており、模型、図面、写真やドローイングを通して紹介されている。ドイツ人写真家のフロリアン・ホルツァー（Florian Holzherr）に特別に依頼し撮影された写真も収録。作品を幅広く取り上げ美しく仕上げられた本書は、強い影響力を持つ作者のファンにとって存分に堪能できる1冊となっている。