• HOME
  • BOOKS
  • THE COLOR OF A FLEA’S EYE: THE PICTURE COLLECTION

アメリカ人ヴィジュアルアーティスト、タリン・サイモン(Taryn Simon)の作品集。1915年の創設以来、ニューヨーク公共図書館(The New York Public Library)は、誰もが自由に閲覧できるようにありとあらゆる種類の視覚的資料を公開してきた。作者は、9年越しのプロジェクト「The Color of a Flea's Eye」で同図書館の「Picture Collection」の歴史に光を当てた。

「Picture Collection」の民主的な分類システムは、インターネットの検索エンジンが登場する半世紀も前から利用者の様々な要求に応えることを目指して作られていた。そしてアメリカの文化は、日々寄せられるリクエストや利用者による介入から生まれたアルゴリズムに基づくシステムに従って素材が整理され、文化に再吸収されるという循環の中で形成されていった。

ジャーナリスト、歴史家、映画製作者、デザイナー、広告主、さらには米軍までもが利用してきた「Picture Collection」は、特にアーティストにとって欠かせないリソースであり続けてきた。ロックフェラーセンターの壁画「十字路の人物」(1932-33年)を制作したディエゴ・リベラ(Diego Rivera)も、1940年代に箱型のアッサンブラージュを制作したジョセフ・コーネル(Joseph Cornell)もこのコレクションにインスピレーションを得ており、1950年代から60年代にかけてはアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)もここで画像を大量に入手しては自身のイラストや絵画の元ネタとして使い、その多くを返却することなく手元に置いていたという。

1929年にコレクションの管理者に就任したロマーナ・ジャヴィッツ(Romana Javitz)は、急増する利用者のニーズを先取りすることを目指し、コレクションの理念、アイデンティティ、方針の形成を先頭に立って主導した。ジャヴィッツの先駆的な活動の中でも特筆すべきは、内容の明快な多様化に向けて尽力したことである。このコレクションが図書館挙げての取り組みになる何十年も前から、彼女はアフリカ系アメリカ人のフォークアートや生活の描写など、アメリカ社会において見過ごされてきたテーマに関する幅広い資料を収集していた。

ジャヴィッツの在職中にベレニス・アボット(Berenice Abbott)、ルイス・ハイン(Lewis Hine)、ウォーカー・エヴァンス(Walker Evans)、ヘレン・レヴィット(Helen Levitt)、ドロシア・ラング(Dorothea Lange)をはじめとする写真家たちが自らの写真をコレクションに提供するようになった。こうして、しばしば参照される内容の濃い写真の書架が誕生した。議会による弾圧を恐れた経済学者のロイ・ストライカーが秘密裡に寄付した農業安定局主導のプロジェクトの写真4万点が収蔵されていたこともある。

幼い頃から「Picture Collection」に深い興味を抱いてきた作者は、2012年にこのコレクション自体をテーマにした包括的な研究を開始した。「握手」「警察」「酸素」「壊れたもの」「廃墟 / 廃村」「金融恐慌」など、同コレクションの開架書架のテーマ別フォルダを出発点とし、それらの具体的な内容を大判のカメラで撮影、整理・記録し、ゆるやかにつながるイメージを重ね合わせて、抽象的な色彩面や神経網、あるいはタイル状の検索結果を連想させる絵画へと昇華した。

作者にとって写真とは、流動的なコレクションを一時的に停止させ、偶然できた配置から読み取ることができる予期せぬ意味を明らかにするための行為だった。作者の写真によると、このコレクションは変化し続ける人々の欲求を無意識のうちに記録し、権力、人種、性別の潜在的な断層を露わにする装置として働いている。それと同時に作品は、イメージを収集するという一見中立的なシステムを見えざる手が動かしていることを指摘し、過去に思い描かれていたありそうもない未来の姿を明らかにしている。

ロマーナ・ジャヴィッツと1968年まで作者が指揮したこのコレクションへのオマージュである本書は、我々に自分がどのようなイメージに価値を見出しているのかを再考させる様々な力について探求している。また本書のタイトルは、1930年の利用者のリクエストから名付けられた。

ニューヨーク公共図書館本館(スティーブン・A・シュワルツマン・ビルディング )のサロモンルーム(ルーム316)と「Picture Collection」(ルーム100)で特別に行われたインスタレーションは、2021年7月から9月までGagosianギャラリーで開催された作者のプロジェクトの二部制の展覧会の一部である。Gagosianでは、写真に加え、同コレクションが21世紀のイメージメーキングの歴史において果たしてきた知られざる役割を今に伝える手紙やものが展示される。これらは互いに補完し合い、大衆が視覚的素材に飢えていた、忘れられた時代を記憶に残し、私たちが消費するイメージの運命と、イメージと私たちの関係についての問いを浮上させている。展覧会は、作者および同図書館のアート、プリンツ & 写真部門のミリアム & アイ・D・ウォラック副所長で写真部門のロバート・B・メンシェルシニアキュレーターのジョシュア・チャン(Joshua Chuang)が主催した。

MORE

タリン・サイモン

THE COLOR OF A FLEA’S EYE: THE PICTURE COLLECTION

2020

SOLD OUT

アメリカ人ヴィジュアルアーティスト、タリン・サイモン(Taryn Simon)の作品集。1915年の創設以来、ニューヨーク公共図書館(The New York Public Library)は、誰もが自由に閲覧できるようにありとあらゆる種類の視覚的資料を公開してきた。作者は、9年越しのプロジェクト「The Color of a Flea's Eye」で同図書館の「Picture Collection」の歴史に光を当てた。

「Picture Collection」の民主的な分類システムは、インターネットの検索エンジンが登場する半世紀も前から利用者の様々な要求に応えることを目指して作られていた。そしてアメリカの文化は、日々寄せられるリクエストや利用者による介入から生まれたアルゴリズムに基づくシステムに従って素材が整理され、文化に再吸収されるという循環の中で形成されていった。

ジャーナリスト、歴史家、映画製作者、デザイナー、広告主、さらには米軍までもが利用してきた「Picture Collection」は、特にアーティストにとって欠かせないリソースであり続けてきた。ロックフェラーセンターの壁画「十字路の人物」(1932-33年)を制作したディエゴ・リベラ(Diego Rivera)も、1940年代に箱型のアッサンブラージュを制作したジョセフ・コーネル(Joseph Cornell)もこのコレクションにインスピレーションを得ており、1950年代から60年代にかけてはアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)もここで画像を大量に入手しては自身のイラストや絵画の元ネタとして使い、その多くを返却することなく手元に置いていたという。

1929年にコレクションの管理者に就任したロマーナ・ジャヴィッツ(Romana Javitz)は、急増する利用者のニーズを先取りすることを目指し、コレクションの理念、アイデンティティ、方針の形成を先頭に立って主導した。ジャヴィッツの先駆的な活動の中でも特筆すべきは、内容の明快な多様化に向けて尽力したことである。このコレクションが図書館挙げての取り組みになる何十年も前から、彼女はアフリカ系アメリカ人のフォークアートや生活の描写など、アメリカ社会において見過ごされてきたテーマに関する幅広い資料を収集していた。

ジャヴィッツの在職中にベレニス・アボット(Berenice Abbott)、ルイス・ハイン(Lewis Hine)、ウォーカー・エヴァンス(Walker Evans)、ヘレン・レヴィット(Helen Levitt)、ドロシア・ラング(Dorothea Lange)をはじめとする写真家たちが自らの写真をコレクションに提供するようになった。こうして、しばしば参照される内容の濃い写真の書架が誕生した。議会による弾圧を恐れた経済学者のロイ・ストライカーが秘密裡に寄付した農業安定局主導のプロジェクトの写真4万点が収蔵されていたこともある。

幼い頃から「Picture Collection」に深い興味を抱いてきた作者は、2012年にこのコレクション自体をテーマにした包括的な研究を開始した。「握手」「警察」「酸素」「壊れたもの」「廃墟 / 廃村」「金融恐慌」など、同コレクションの開架書架のテーマ別フォルダを出発点とし、それらの具体的な内容を大判のカメラで撮影、整理・記録し、ゆるやかにつながるイメージを重ね合わせて、抽象的な色彩面や神経網、あるいはタイル状の検索結果を連想させる絵画へと昇華した。

作者にとって写真とは、流動的なコレクションを一時的に停止させ、偶然できた配置から読み取ることができる予期せぬ意味を明らかにするための行為だった。作者の写真によると、このコレクションは変化し続ける人々の欲求を無意識のうちに記録し、権力、人種、性別の潜在的な断層を露わにする装置として働いている。それと同時に作品は、イメージを収集するという一見中立的なシステムを見えざる手が動かしていることを指摘し、過去に思い描かれていたありそうもない未来の姿を明らかにしている。

ロマーナ・ジャヴィッツと1968年まで作者が指揮したこのコレクションへのオマージュである本書は、我々に自分がどのようなイメージに価値を見出しているのかを再考させる様々な力について探求している。また本書のタイトルは、1930年の利用者のリクエストから名付けられた。

ニューヨーク公共図書館本館(スティーブン・A・シュワルツマン・ビルディング )のサロモンルーム(ルーム316)と「Picture Collection」(ルーム100)で特別に行われたインスタレーションは、2021年7月から9月までGagosianギャラリーで開催された作者のプロジェクトの二部制の展覧会の一部である。Gagosianでは、写真に加え、同コレクションが21世紀のイメージメーキングの歴史において果たしてきた知られざる役割を今に伝える手紙やものが展示される。これらは互いに補完し合い、大衆が視覚的素材に飢えていた、忘れられた時代を記憶に残し、私たちが消費するイメージの運命と、イメージと私たちの関係についての問いを浮上させている。展覧会は、作者および同図書館のアート、プリンツ & 写真部門のミリアム & アイ・D・ウォラック副所長で写真部門のロバート・B・メンシェルシニアキュレーターのジョシュア・チャン(Joshua Chuang)が主催した。

MORE

取り扱い twelvebooks
サイズ 33.6 x 25.6 x cm
重量 4.5kg
商品コード 1100012526
出版 CAHIERS D’ART
著者 Taryn Simon
ISBN 9782851173140
配送までの期間 ご注文確定後、2-7日以内
カテゴリー
送料 ¥770(税込)
購入条件

RELATED ART PRODUCTSタリン・サイモンのアートプロダクト一覧