水は日常ありふれた、しかし最も重要な物質である。様々な形状、状態であらゆる物質と関係し、変化、影響を与える。水は物質に出入する過程で創造と破壊の両面をもたらし、それは生命にとっても同様であり、必要不可欠でありながらも、時に脅威となる存在である。我々が目にする自然の風景はその繰り返しの結果であり、自然の現象や人の歴史、そして引き起こされる感情は、水との関わりに置き換えられるのかもしれない。

この作品で私は、地表を模した白い粉の板に、異なる量、形状の水を与えた。また実際の雨にその板をさらした。土は水との関係で様々な表情を作り出し、白の大地はその造形を強調する。

水は物質に影響を与え、その本質を引き出すと同時に、水もまた物質の特性に沿って姿を変え、その関わりの過程を物質の中に刻み込む。その記録は、いわば水の記憶であり、時にそれは、水そのものよりも水の力を感じさせる。物質に宿した水の記録と記憶、そして人の記憶と感情は共にあるのではないだろうか。 

ー白矢幸司

ART MARKET 2023　サテライト会場にて展示。

会場：BaBaBa（高田馬場）

住所：東京都新宿区下落合2-5-15-1F

会期：9月1５日(金)〜17日(日)　12:00 〜19:00　※最終日のみ18:00閉場。