作品設置イメージ *販売作品とは異なります

作品設置イメージ *販売作品とは異なります

2021年にVOILLDにて開催された安田昂弘の個展「Drive My Car.」にて発表された平面作品です。

安田昂弘は、アートディレクター、グラフィックデザイナー、ムービーディレクターなど、多彩な顔を持ち幅広い分野で作品制作を行っています。そのエッジーな表現は様々な分野から支持を得ており、広告やプロダクトのアートディレクション、デザインをはじめ、企業やブランドへの作品提供や、国内外でも作品の展示を行うなど精力的に発表をし続け、多岐に渡り活躍の場を広げています。

安田の作品は、シンプルに削ぎ落とされていながらも遊び心のあるデザインや、緻密に組み重なった線や面、独自の配色やモチーフなど、彼の思考とコンピューターグラフィック(CG)としての視覚的な刺激や表現を最大限に利用し構図化したものを、グラフィックデザインと切り離すことのできない出力という手法を用いて制作されます。まるでキャンバスに絵の具を重ねていくような作業を、データのレイヤーで構成されるCGという枠の中で物質的にいかに解釈し、作品として具体化していくかという事に挑戦し、CGとしての存在意義、絵画とのギャップについての思索を続け、絶えず作品制作を行う安田は、グラフィックデザイナーとして他に類を見ない随一の存在と言えます。

今回の作品シリーズでは、時間と空間移動の概念にフォーカスが当てられました。安田は近年、電車や飛行機、オンライン会議など、文明の進化によって得られた便利さや快適さとは裏腹に、時間や空間の体感を忘れ、世界と自分との本来の在り方から離れてしまっているのではと気付き疑問を抱きました。その答えを探すかのように、自身の愛車で国内を長距離に渡って走り続け、昨今では省かれがちだった「道中」というプロセスを長時間かけてじっくりと体感することで、忘れていた根本的な生活の感覚を取り戻したのです。その道中で目にした、様々なスピードと表情で流れてゆく景色を切り取り、限界まで簡略化した最低限の要素のグラフィックに変換し表現に挑みました。目的地=作品と置き換えるとすると、目的地までの道中を楽しむように、ただ作品を見るという行為は簡単なものではなく、制作のプロセスを知り、人間のありとあらゆる感覚や経験が駆り集められることで完結するということを、シンプルな表現を通して伝えているようにも捉えることができます。発表される53点もの作品群を通して、個人それぞれの時間という価値観や、とりまく環境や体験の重要さ、現実世界との関係性を、今一度見つめ直す契機となれば幸いです。

こないだ枝雀落語大全を聞いていて思った。
旅には目的地がある。が、そのプロセス。すなわち道中こそ本当の面白さなのかもしれない。また、その道中という概念はもうかなり薄れてしまっただろう。
自分の速度に合わせ景色がゆっくりと流れ、思わぬ人に出会い、時間が移り変わる。移動した分だけ単純に疲れる。晴れた昼の移動は気持ちいいが、悪天候は本当に引き返したくなる。夜はなんかちょっと怖くって、なんとも言えないスリルがある。このプロセスを経ての目的地。
目的地に着くということは、またそこから帰り道が始まる。帰らないと終わらない。目的の達成ではなく、道中という考え方を見直すとこれほど尊い時間はない。
はじめてのおつかいのように全身全霊で向かうのだ。

メトロや飛行機、まあzoomとかもそうか。
空間をワープするようにプロセスをぶっ飛ばして移動し目的を達成する。まさに文明であり、圧倒的に便利。だって早く会いたいもんね。早く終わらせたいし。早く帰りたいもん。
だがその代償として、自分がまるで粒子にでもなったような感覚で次の目的地につく。道中という概念は吹き飛ぶ。

少し前からこの事については疑問に思っていた。このワープのせいで妙に1日が短く感じていた気がした。

この二、三年のうちに、これも文明の力ではあるが移動手段が車に変わった。自分のさじ加減の速度(法定速度)で道と一体化する。
すると、景色は急にグラデーションに変わる感覚を取り戻した。時間の責任は自己によるものにかわり(渋滞してて遅刻しますは伝家の宝刀)、より立体感を持って東京や空間を捉えるようになった。
それくらいからかもしれない。時間が妙に長く感じるようにもなった。一日も一年もなかなか終わらない。
こういう仕事をしていていうのもなんだが、手っ取り早いことは好きではない。ゆっくりしていたいし、のんびりするのが最高だ。

このあいだ「長崎まで往復2,500kmを自走で行ってみた。」をノリでやってみた。目的は現地にある仕事であるが、自分の足で道中を体験し、より広い空間移動と時間を肌で感じたかった。

永遠に到着しない、高速という極上のスーパーパースペクティブを感じながらふと思った。
今年で7年目、7回目のVOILLDでの個展が来る。
これだけは怖いくらいあっちゅう間。だっちゅーの。

ー安田昂弘

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安田昂弘

00:00:53

2021

¥ 66,000 (税込)

2021年にVOILLDにて開催された安田昂弘の個展「Drive My Car.」にて発表された平面作品です。

安田昂弘は、アートディレクター、グラフィックデザイナー、ムービーディレクターなど、多彩な顔を持ち幅広い分野で作品制作を行っています。そのエッジーな表現は様々な分野から支持を得ており、広告やプロダクトのアートディレクション、デザインをはじめ、企業やブランドへの作品提供や、国内外でも作品の展示を行うなど精力的に発表をし続け、多岐に渡り活躍の場を広げています。

安田の作品は、シンプルに削ぎ落とされていながらも遊び心のあるデザインや、緻密に組み重なった線や面、独自の配色やモチーフなど、彼の思考とコンピューターグラフィック(CG)としての視覚的な刺激や表現を最大限に利用し構図化したものを、グラフィックデザインと切り離すことのできない出力という手法を用いて制作されます。まるでキャンバスに絵の具を重ねていくような作業を、データのレイヤーで構成されるCGという枠の中で物質的にいかに解釈し、作品として具体化していくかという事に挑戦し、CGとしての存在意義、絵画とのギャップについての思索を続け、絶えず作品制作を行う安田は、グラフィックデザイナーとして他に類を見ない随一の存在と言えます。

今回の作品シリーズでは、時間と空間移動の概念にフォーカスが当てられました。安田は近年、電車や飛行機、オンライン会議など、文明の進化によって得られた便利さや快適さとは裏腹に、時間や空間の体感を忘れ、世界と自分との本来の在り方から離れてしまっているのではと気付き疑問を抱きました。その答えを探すかのように、自身の愛車で国内を長距離に渡って走り続け、昨今では省かれがちだった「道中」というプロセスを長時間かけてじっくりと体感することで、忘れていた根本的な生活の感覚を取り戻したのです。その道中で目にした、様々なスピードと表情で流れてゆく景色を切り取り、限界まで簡略化した最低限の要素のグラフィックに変換し表現に挑みました。目的地=作品と置き換えるとすると、目的地までの道中を楽しむように、ただ作品を見るという行為は簡単なものではなく、制作のプロセスを知り、人間のありとあらゆる感覚や経験が駆り集められることで完結するということを、シンプルな表現を通して伝えているようにも捉えることができます。発表される53点もの作品群を通して、個人それぞれの時間という価値観や、とりまく環境や体験の重要さ、現実世界との関係性を、今一度見つめ直す契機となれば幸いです。

こないだ枝雀落語大全を聞いていて思った。
旅には目的地がある。が、そのプロセス。すなわち道中こそ本当の面白さなのかもしれない。また、その道中という概念はもうかなり薄れてしまっただろう。
自分の速度に合わせ景色がゆっくりと流れ、思わぬ人に出会い、時間が移り変わる。移動した分だけ単純に疲れる。晴れた昼の移動は気持ちいいが、悪天候は本当に引き返したくなる。夜はなんかちょっと怖くって、なんとも言えないスリルがある。このプロセスを経ての目的地。
目的地に着くということは、またそこから帰り道が始まる。帰らないと終わらない。目的の達成ではなく、道中という考え方を見直すとこれほど尊い時間はない。
はじめてのおつかいのように全身全霊で向かうのだ。

メトロや飛行機、まあzoomとかもそうか。
空間をワープするようにプロセスをぶっ飛ばして移動し目的を達成する。まさに文明であり、圧倒的に便利。だって早く会いたいもんね。早く終わらせたいし。早く帰りたいもん。
だがその代償として、自分がまるで粒子にでもなったような感覚で次の目的地につく。道中という概念は吹き飛ぶ。

少し前からこの事については疑問に思っていた。このワープのせいで妙に1日が短く感じていた気がした。

この二、三年のうちに、これも文明の力ではあるが移動手段が車に変わった。自分のさじ加減の速度(法定速度)で道と一体化する。
すると、景色は急にグラデーションに変わる感覚を取り戻した。時間の責任は自己によるものにかわり(渋滞してて遅刻しますは伝家の宝刀)、より立体感を持って東京や空間を捉えるようになった。
それくらいからかもしれない。時間が妙に長く感じるようにもなった。一日も一年もなかなか終わらない。
こういう仕事をしていていうのもなんだが、手っ取り早いことは好きではない。ゆっくりしていたいし、のんびりするのが最高だ。

このあいだ「長崎まで往復2,500kmを自走で行ってみた。」をノリでやってみた。目的は現地にある仕事であるが、自分の足で道中を体験し、より広い空間移動と時間を肌で感じたかった。

永遠に到着しない、高速という極上のスーパーパースペクティブを感じながらふと思った。
今年で7年目、7回目のVOILLDでの個展が来る。
これだけは怖いくらいあっちゅう間。だっちゅーの。

ー安田昂弘

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取り扱い VOILLD
エディション Unique / サイン入り
サイズ 30.0 x 30.0 x 3.3 cm
素材 アクリルパネルにソルベントプリント、アクリルマウント 裏面:アルミニウムの下駄付き
商品コード 1100016611
配送までの期間 ご注文後、約10日でのお届けを予定しております。
*送料は着払いとなります。予めご了承ください。
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