• HOME
  • ARTWORKS
  • On the Ground – 天地を見る #22 Jun. 30, 2008

普後均は写真に写らないものを気にかけてきた。被写体を捉えてはいても、写っているものを触媒としてつながる向こう側の何かにむけてカメラを向けてきた。

本展タイトルにもなっている未発表シリーズ《On the Ground》は、三つのグループを含んでいる。ひとつは《蝉を拾う》、もうひとつは、《時に触れる》、三つ目が《天地を見る》である。2004年ごろから撮り始め、撮影行為と思考を往復する運動が重なるなかで、しだいに幹が太くなり枝を伸ばし葉が繁るようにしてできた作品群である。

普後は、夏が終わると家の周りや裏手にある運動場で、生命が尽きて落ちている蝉を拾っては家に持って帰っていた。手に取って蝉の死骸をしげしげ眺めてみると、虫に食われているもの、羽が引きちぎられたもの、踏まれて身体の一部が欠損しているものなどそれぞれ特徴があり、また羽脈や、身体のつくりや、表面の艶なども含め造形的に美しい。普後はそんな蝉の亡骸に魅せられ、ひとつずつ丁寧に写真に収めた。裏と表を撮影しプリントに伸ばした。拾ってきた蝉が溜まると、普後はひとつずつすりつぶして粉にすることにした。ひとにぎりの粉は個体ごとに小さいガラス瓶に収められた。そのガラス瓶もまた、蝉の一生が一様ではないように、それぞれの個性を見せて存在していた。普後はその瓶も撮影して、蝉の裏表の写真とともに三枚組にした。これは普後なりの蝉の埋葬の仕方でもあったに違いない。

蝉も人間も含めてすべての生命が誕生し土に還る、その連鎖が我々のいまの存在に繋がっている。太古から繰り返されてきた循環する時間の流れと蓄積を撮れないだろうか、そう考えていたときに、縄文、弥生時代の発掘調査が運動場であった。掘られた穴に現れた地層は何千年もの時間が積もり積もった形であり、それは過去の時間に触れるということでもある。《時に触れる》はそれを撮影することから始まり現在進行形で日々変化していく運動場でのイメージである。

加えて、運動場での一つの地点を決め現場に行った時に必ずその地点の足元の地面と、その真上の空を撮影して対の写真にした。

蝉の最後の形を精密描写した《蝉を拾う》、現在から太古の時間まで繋がる《時に触れる》、そして地球と宇宙が一本の視線で貫かれる《天地を見る》、それらが、蝉の亡骸を中心にして集まり、《On the Ground》という写真の星雲になった。

《天地を見る》は運動場で毎回同じ場所に立ち、足元の地上と、頭上の空とを撮影した。空は雲が流れ、青さも時間や季節によっても異なるのは当然のように思えるが、地肌も一見同じ場所とは思えないほど、その変化に飛んでいる。
たとえ同じ場所であっても、1日として同じ様は無く、世界は変わりゆくものであることが示唆される。《On the Ground》というシリーズ全体を通して、命の時間や世界の有り様、ある場所や時間との接点について思考を巡らせる。

MORE

普後均

On the Ground – 天地を見る #22 Jun. 30, 2008

2008

¥ 392,040 (税込)

普後均は写真に写らないものを気にかけてきた。被写体を捉えてはいても、写っているものを触媒としてつながる向こう側の何かにむけてカメラを向けてきた。

本展タイトルにもなっている未発表シリーズ《On the Ground》は、三つのグループを含んでいる。ひとつは《蝉を拾う》、もうひとつは、《時に触れる》、三つ目が《天地を見る》である。2004年ごろから撮り始め、撮影行為と思考を往復する運動が重なるなかで、しだいに幹が太くなり枝を伸ばし葉が繁るようにしてできた作品群である。

普後は、夏が終わると家の周りや裏手にある運動場で、生命が尽きて落ちている蝉を拾っては家に持って帰っていた。手に取って蝉の死骸をしげしげ眺めてみると、虫に食われているもの、羽が引きちぎられたもの、踏まれて身体の一部が欠損しているものなどそれぞれ特徴があり、また羽脈や、身体のつくりや、表面の艶なども含め造形的に美しい。普後はそんな蝉の亡骸に魅せられ、ひとつずつ丁寧に写真に収めた。裏と表を撮影しプリントに伸ばした。拾ってきた蝉が溜まると、普後はひとつずつすりつぶして粉にすることにした。ひとにぎりの粉は個体ごとに小さいガラス瓶に収められた。そのガラス瓶もまた、蝉の一生が一様ではないように、それぞれの個性を見せて存在していた。普後はその瓶も撮影して、蝉の裏表の写真とともに三枚組にした。これは普後なりの蝉の埋葬の仕方でもあったに違いない。

蝉も人間も含めてすべての生命が誕生し土に還る、その連鎖が我々のいまの存在に繋がっている。太古から繰り返されてきた循環する時間の流れと蓄積を撮れないだろうか、そう考えていたときに、縄文、弥生時代の発掘調査が運動場であった。掘られた穴に現れた地層は何千年もの時間が積もり積もった形であり、それは過去の時間に触れるということでもある。《時に触れる》はそれを撮影することから始まり現在進行形で日々変化していく運動場でのイメージである。

加えて、運動場での一つの地点を決め現場に行った時に必ずその地点の足元の地面と、その真上の空を撮影して対の写真にした。

蝉の最後の形を精密描写した《蝉を拾う》、現在から太古の時間まで繋がる《時に触れる》、そして地球と宇宙が一本の視線で貫かれる《天地を見る》、それらが、蝉の亡骸を中心にして集まり、《On the Ground》という写真の星雲になった。

《天地を見る》は運動場で毎回同じ場所に立ち、足元の地上と、頭上の空とを撮影した。空は雲が流れ、青さも時間や季節によっても異なるのは当然のように思えるが、地肌も一見同じ場所とは思えないほど、その変化に飛んでいる。
たとえ同じ場所であっても、1日として同じ様は無く、世界は変わりゆくものであることが示唆される。《On the Ground》というシリーズ全体を通して、命の時間や世界の有り様、ある場所や時間との接点について思考を巡らせる。

MORE

取り扱い MEM
エディション 10
サイズ 26.0 x 39.0 x cm
素材 インクジェット・プリント
商品コード 1100043332
配送までの期間 展覧会終了後、2週間以内の発送となります。
備考 2点で1セットの作品です。
額装込みの価格ですが、プリントのみをご検討の方はお問い合わせください。

イメージサイズ:各26×39cm
額サイズ:各16×20インチ(42.1×52.2cm)
カテゴリー
購入条件