スーパーマーケット“アルター”市場
東京と京都を拠点に活動するディレクター4名がお送りする、市場をオルタナティブに思考するアートマーケット。 本企画は昨年2月の第1回に続く第2回目の開催。既存のジャンルに囚われないディレクション及びキュレーションを展開する各ディレクターのセレクトにより、京都をはじめとする各地から11名の作家が出品しています。
「OIL by 美術手帖」でもディレクターの推薦文とともに作品をご紹介します。この機会にぜひチェックしてみてください。
ディレクター : 吉田山(FL田SH)
TYM344
東京を拠点に活動するアーティスト。 「二値化絵画」という独自の方法論を基礎とし、絵画史を考察し、そして“描かれた何か”というメッセージの恒久性を高めるためにあえて色彩やディテールを単純なモノクロ化した作品を制作しています。そのメッセージを体現するように、今回は河原温をオマージュした作品などが並びます。さらに特筆すべきは同じ方法論で音楽制作しCDをリリースしている点、異なる媒体で同じ方法論を用いることで鑑賞者である私たちは方法の中に新しい道を発見することができるのではないでしょうか。
金田金太郎
京都を拠点とするアーティスト。 今は無くなってしまった外苑前のFL田SHで開催の『Imaginary Taxidermy』という展覧会の企画や、渋谷パルコ「OIL by 美術手帖」での「RISO IS IT」への出品をしていただきました。 金田さんの作品と特徴としては、グラフィティカルチャーのスタディと自身の関西人というアイデンティティを某国民的キャラクターへ投射しつつ、画像では伝わらないほどの作品の細かい仕上げや、そして様々な素材での表現探求といった複合的な視座から立ち上がる作品群です。今回BnAでは日々忙しく加速し続ける現代人に対する啓蒙ともなりうるメッセージを描いた平面作品の新作群が出品されます。
時吉あきな
京都を拠点とするアーティスト。 原寸大の犬の写真をDIYで立体表現した「ワンオール」という作品で第16回グラフィック「1_WALL」のグランプリを受賞しています。その後もその発明ともいえる立体写真シリーズを展開されています。 FL田SHでは『Imaginary Taxidermy』にて金田さんと2人展で出品していただいており、その時展開していた作品は、スマートフォンで撮影した作品の為に撮ったわけではない“旅行の思い出写真”を立体化し、記憶が持つ不確かさを標本化しました。 今回BnAでは、今までの立体写真から更なる発展をし、立体動画ともいえる新境地へと到達しております。
ディレクター : 佐久間磨(Rondade)
WORKSHOP™
元々彼は、自身でアパレルブランド{現在は休止中)で服作りにをしながら、見せる場の延長としてディスプレーを製作するようになる。 ディスプレイの延長(拡張)から 作品のような物が生み出され 現在のような活動に以降していったのは自然な流れにあったのかもしれない。 部材のもつ素材感と機能の持つ特性を最大限に生かし、 ただその特徴だけを徹底的に使い拡張させたミニマルな作品の形式は彼の思考そのものような気がする。
西舘朋央
西舘がコラージュ作品を制作するきっかけは、旅先で訪れたイギリスで、路上のゴミを拾い集め一冊の日記のまとめたのが始まり。 配置した瞬間に、そのものが本来持っている機能を失い、新しい見え方が生まれることに面白さを覚えたらしい。 元々、音楽活動をしていた西舘は曲作りにおいても独自の解釈で製作していた。 構造からではなく偶然が生みだす 連なりから形を作り出す彼の独自解釈から生まれるグルーヴがとても興味深い。
伊佐治雄悟
身近な日用品の素材の性質を生かし、新たなかたちに変容させ立体作品を製作している伊佐治。 素材に対し何かしらの力を加えそこに発生する可塑性から導かれた形態が作品の特徴的な造形として定着される。 結果として偶然に生じた歪みや変容が単に造形の美しさだけに留まらない何かが彼の作品にはある気がする。
ディレクター : 黒田純平(keshik.jp)
長谷川由貴
長谷川由貴は、人間と植物の関係性について考察することをテーマに絵画表現をする作家です。一見、絵画表現として植物はよくモチーフにされていますが、ここでは植物単体にフォーカスされて描かれています。我々人類が生きていく上で植物は必要不可欠な存在です。しかし、私達はそのライフラインとなる存在について知らないことが多くあります。そこで作家は、対象の事を深く知りながら関係性を構築していくのが制作スタイルです。今回の作品では、品種改良により美しさを人類にコントロールされてしまった洋蘭をモチーフにした作品などを展開しています。一枚の植物画ではなく、一つの生物として認識しながら鑑賞してみて下さい。
高橋美衣
高橋美衣は、昨年kumagusukuにて個展を開催していた時に拝見させていただいたアーティストです。有機的な動きを感じさせられる形に、独自の手法で着色しているカラーなどバリエーションが豊富ま立体作品が特徴です。このようなイメージはどこからサンプリングされているのか、それは作家自身のいままでの経験や記憶の中で無意識下でインプットしている情報です。いわば、作品のモチーフは常に周りに存在しており日常や非日常、どんなシーンでも作家にとっては作品制作を行い続けられるモチベーションにつながっております。「これ、どんな形だろう?」そう思えば高橋美衣の作品の虜に。色、形から様々なイメージを想像しみてください。
星拳五
星拳五は、京都精華大学版画コースを卒業後、文化的情報を後世につないでいくための「保存」の手段を模索する作家です。現在は、インターネットに漂流する情報を地球上で長く存在する物質、石にペーストを施し保存を行っています。昨年、FL田SHにて個展を企画してから多くの方に注目して頂いております。現在は石のみですが、保存する媒体は無限にあるので今後の展開にも期待ができるアーティストです。インターネット自体は現在便利な物ですが、いつかの未来、それらが破綻する時が来たとしたら貴重な文化的情報はなにで保管されるべきか、現代に生きている私達ならではの議論ができるはずです。
ディレクター : 筒井一隆(BnA Alter Museum)
西原彩香
西原彩香さんは、2017年のアートアワードトーキョー丸の内入賞や、「artists space TERRAIN」という共同スタジオを立ち上げ京都を中心に活動する作家です。「軽さ」をテーマに絵画を中心とした制作を行っています。ここで言う「軽さ」とは、情報や物質的なもの、その両方の意味での物流や、そして"ノリ"のような感性としての意味も内包しています。西原さんの作品は、スマートフォン上で描かれるドローイングをもとに、ネット上で拾った画像の色彩とが実際の絵画の中で絡みあい構成されています。本来質量を持たないスマートフォン上のドローイングや画像が、実物の絵画として立ち上がった時、デジタルドローイングや画像には微かな質量が生じているような、実物の絵画は軽やかさを得ているような...そういった感覚が心地よい作品です。 そして、私自身、そうした「軽さ」から身体のリアリティを逆説的に感じ取り、現代の日常化されたテクノロジーに影響を受けながら作品化する西原さんの姿勢に、とても共感を覚えます。
澤あも愛紅
澤あも愛紅さんは、西原さんと同じく「artists space TERRAIN」という共同スタジオを立ち上げ京都を中心に活動する作家です。「人の目から認識できない空間の歪み、4次元的空間の存在」をテーマに、絵画や写真を複合的に組み合わせた作品を発表しています。澤さん曰く、普段遭遇する”遠くて近い”とか”表だけど裏”みたいな瞬時の視覚体験を、”4次元”的と捉えているそう。そのような場面を写真に撮る所から制作が始まり、”4次元”を写真へ、そして写真が張り合わさり加工され絵画へ、絵画が”4次元”的瞬間へと再び作品として帰結するため空間へ、と言ったように澤さんの作品では、2から4の次元をまたぐ試みがされています。 初めて澤さんの作品を見た時、幾重にも視点の入り混じるイメージが描かれ、何やら壁から絵画が浮いていて、ついつい色んな角度から見てしまうような鑑賞体験でした。見れば見るほど、体験すればするほど、澤さんが日々感じる”4次元”的感覚に招き入れえられるような面白い体験で、今後の展開も含めてとても楽しみな作家です。
「スーパーマーケット“アルター”市場 vol.2」の販売作品一覧はこちらから
Artist Profile
ディレクタープロフィール
吉田山
散歩詩人。富山県うまれ、アルプス育ち。 都市が持つ複雑なストラクチャーを内面化し、表現へと結びつける。 2018年に「同路上性」をテーマに掲げるギャラリー&ショップFL田SHを立ち上げ、展示の企画と運営、コンセプト管理をおこなう。また、パフォーマンスコレクティブのKCN (kitchen) のメンバーとしても活動している。 近年の主な活動に、展覧会企画 楕円のつくり方「ANB Tokyo オープニング展「ENCOUNTERS」4階」(東京、2020)、 アートフェア出展「DELTA Executive Committee」 (FL田SHとして出展、大阪、2020)、 展覧会企画「RISO IS IT」 (渋谷PARCO「OIL by 美術手帖」、東京、2020)など多数。
佐久間磨
さまざまなアートフォームを創造の初期衝動に立ち返り、既成の枠にとらわれない形と方法で現化することを目的にRondadeを設立。『冨井大裕 : 関係する / Interact 』、伊丹豪 『photocopy』、Buku Akiyama 『Composition No.1–10 and the derivatives, 2001–2016 』、澤田育久『substance』などのアートブックや写真集を出版。空間、アートブックのディレクション、キュレーション等活動は多岐にわたる。
黒田純平
1994年生まれ。大阪府出身。京都精華大学芸術学部洋画コース卒業。 大学では絵画作品を主に専攻し卒業後は、「場所をもたないギャラリー」keshik.jpを立ち上げ、各地で展覧会、POPUPを開催する。他にも、アートやクリエイティブ関係のコンサルタントやディレクションも行う。
筒井一隆
1986年生まれ。BnA Alter Museumアートディレクター。 ギャラリーでのディレクター職、インテリアデザインオフィスでのアートコーディネート業務を経て、京都河原町にある宿泊型ミュージアムBnA Alter Museumにて展覧会のキュレーションや音楽イベントの企画運営を行う。 近年の主な展覧会企画に 「楽観のテクニック」(2020)、「TO SELF BUILD」 (2019)。
Information
スーパーマーケット“アルター”市場 vol.2
会期:2021年2月27日(土) 〜3月14日(日) |