日本と西洋、美術と工芸の関係性を考察
糸や埃に還元可能なマテリアルとして、織物を用いて作品を制作する手塚。長い海外生活のなかで、手塚が強く意識し考察する「日本と西欧」「美術と工芸」「近代と現代」「過去と現在」は、つねにコンセプトとして作品に内包されてきました。
今年9月には、「Flowery Obscurity 華の闇」(MA2 Gallery、東京、2019)、「Dear Oblivion —親愛なる忘却へ—」(スパイラルガーデン、東京、2019)と2つの個展を東京で開催。上述二項の、それぞれの出会いあるいは分岐についての考察から生み出された新作を発表しました。
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このたび「OIL by 美術手帖」では、同個展にも展示された作品、全6点をピックアップ。アムステルダム国立美術館のキュレーター、チン・リン・ワンからの提案を受けて制作したという、レンブラントの《夜警》がモチーフの大作も販売いたします。
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Artist Profile
手塚愛子(てづか・あいこ)
手塚愛子は1976年東京都生まれ。99年武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業、2001年同大学大学院造形研究科油絵コース修了。絵画の不可逆な構造を解明する方法として、生成過程を巻き戻しできる織物や刺繍に着目し、糸を解くことでその構造を表出させる独自の手法で制作を行う。クラシック調の布から緑、赤、青、黒、黄の縦糸のみを引き抜いて束ねた初期の作品《縦糸を引き抜く-五色》(2004)では、複雑な模様がわずか5色の編み込みで形成されていることを表面化したと同時に、原色の重なりで様々な色調を生み出す絵画の基本構造をひも解くことを試みた。解体・再構築される作品は、たんに構造を示すだけでなく、糸を紡いだ人々の時間や織物に宿る歴史をあらわにする。07年の個展「薄い膜、地下の森」(スパイラルガーデン、東京)では、直径7メートルの巨大な刺繍を宙に浮かせて展示。鑑賞者が刺繍の下を通り抜けて、模様をつくる大量の糸を見えるようにした同作品は、目に見える物事が断片的であることを表現した。10年よりロンドン、11年よりベルリンを拠点に活動し、近年は、異国で生活をするなかで自身が感じる齟齬などをテーマに、歴史上の造形物を引用した作品を手がけている。
これまでの個展に、「Dear Oblivion ―親愛なる忘却へ―」(Galerie Michael Janssen、ベルリン/スパイラルガーデン、東京、2019)、「Flowery Obscurity - 華の闇」(MA2 Gallery、東京、2019)などのほか、近年では、東京都現代美術館、福岡市美術館、国立新美術館、兵庫県立美術館、豊田市美術館、テキスタイル博物館(オランダ)、ヨハン・ヤコブ美術館(スイス)、韓国国立現代美術館、ターナーコンテンポラリー現代美術館(イギリス)、アジア美術館(ドイツ、ベルリン)、美術工芸博物館(ドイツ、ハンブルク)など、多数の展覧会を開催。