WHYNOT.TOKYOより高屋永遠の個展出品作をご紹介

高屋永遠 多元論者の夢 / The hope of a polyphyletist 2024 60.6x45.5x2.0cm パール材、顔料、油、麻キャンバス

 
 高屋永遠による個展「It calls: shades of innocence」が現在、Lurf MUSEUMで開催中(会期は4月8日まで)。会期にあわせ、オンラインでも出展作品をご紹介いたします。本展では、自らの画風にたどり着く転機となった「青のシリーズ」から、作家としての現在地を示す最新作「罔象」シリーズまでを総覧できる70点以上の作品が並びます。

 2017年より始めた「青のシリーズ」は、制作の際、「『青』という語で表現され得る色」のみ用いるという縛りによって、繊細な色のスペクトラムの探究が求められたことで、自ら色材を練って画材を作り始めたシリーズです。工業的に規定されたレディメイドな絵具がもたらす制限を取り払い、豊かな階調の色彩によって独自の奥行きを実現すること。それは、鑑賞者と共有しえる空間の経験を作り出すために必要不可欠な手法であり、それによって初めて、鑑賞者を日常から切り離された精神の空間へといざないます。

 こうした色の探究は、他者や国内外の土地から色材を得て、自らの外にあるもののエネルギーを作品に取り込むことにもつなががっていきます。資生堂みらい研究グループとの共同研究によって、化粧品顔料である「パール剤」を画材として用いる手法を身につけると、絵画空間の密度や奥行き、色の繊細さはさらに増していきます。そうした外部性に呼応するように高屋自身の世界も広がっていき、旅や滞在制作で訪れた熊野の那智滝、別府の間欠泉では「大いなる自然の循環」を経験。これが作品探究を深めていく契機となり、本展にて新しく発表される「罔象」シリーズへと展開されます。本シリーズは、いわゆる事物としての自然(ネイチャー)の描写ではなく、自然の奥にある「自然」、古来より伝わる仏教的な意味での「自然」(ジネン)であり、混沌と無限を有した自然そのものの経験を表現しようと試みたものです。

 高屋にとって作品制作とは「自らのいる空間の根源、あるいは『現象の立ち現れる源』を、身体を通して立ち上げる行為」だと話します。鑑賞者は自らを「大いなる自然の循環」の一部として感じられるような、その空間にただ佇むことができるような感覚を、会場とともにオンラインでも体験してみてください。

 

 

 

個展「It calls: shades of innocence」出展作品

作品画像をタップすると、作品ページに移動します。
※OIL by 美術手帖に掲載する作品は4点のみOIL限定販売、8点は展覧会会場と併売になります。
展覧会会場で先に売り切れとなる場合がございますが、予めご了承ください。

 

 

《多元論者の夢 / The hope of a polyphyletist》  ※OIL限定販売

高屋永遠 多元論者の夢 / The hope of a polyphyletist 2024 60.6x45.5x2.0cm パール材、顔料、油、麻キャンバス


 

《罔象<星彩と月影> / ∞ : distant splendour or moon shadow》

高屋永遠 罔象<星彩と月影> / ∞ : distant splendour or moon shadow 2024 60.6x60.6x2.0cm パール材、顔料、油、麻キャンバス

 

 

《古多万(こだま) / In resonance》

 高屋永遠 古多万(こだま) / In resonance 2024 65.2x45.5x2.0cm パール材、顔料、油、麻キャンバス


 

《罔象<豊饒> / ∞ : against and beyond the limits》

高屋永遠 罔象<豊饒> / ∞ : against and beyond the limits 2024 145.5cx145.5cx3.0cm パール材、顔料、油、麻キャンバス


 

 



WHYNOT.TOKYO

WHYNOT.TOKYOは2019年に東京・目黒区昭和通り商店街にオープンしたアートギャラリー/アートスペース。美術家・髙屋永遠が主宰するWHYNOT.TOKYOでは国内外の現代美術の美術作家、キュレーター、研究者らと協働で展示を企画し、多岐にわたり作品を紹介。新たな活動形態に向けて22年4月閉館。 2022年3月より自由で機動性のあるギャラリーとして活動開始。エリアに縛られることなく、様々なアーティストとのコラボレーションによるグループ展・企画展などを主に、企画プロデュースを行う。

 

編集部

Artist Profile

高屋永遠

1992年東京都生まれ。ロンドン大学ゴールドスミスを卒業後、現在は東京を拠点に活動。国内外の土地や植物、化粧原料などから自作した色材を用いて作品を制作する。繊細な色のスペクトラムの探求と豊かな階調が織りなす独自の奥行きは、鑑賞者を日常から切り離された精神の空間へと誘う。2019年より、アーティストや美術分野で活動する個人の交流を目的としたプロジェクトWHYNOTを主宰。継続的に、美術を通した連帯とコミュニティー形成に取り組む。 

近年の主な個展に、「JOY AFTER ALL - 花信風」(Lurf MUSEUM、東京、2023)、「桜時」(WHYNOT.TOKYO、東京、2022)、「Slowly but Surely」(WHYNOT.TOKYO、東京、2021)、「The Inevitable」(WHYNOT.TOKYO、東京、2021)、グループ展に、「Chroma Distance」(POLA museum annex、東京、2023)、「Fine Art Collection」(松坂屋名古屋店、愛知、2022)、「CROSSROADS in association with 4 Galleries」(WHAT CAFE、東京、2022)など。

Information

高屋永遠個展「It calls : shades of innocence」

会期:3月2日〜4月8日
会場:Lurf MUSEUM(ルーフミュージアム)1F・2F
住所:東京都渋谷区猿楽町28-13 Roob1
開館時間:11:00 - 19:00 
休館日:不定休 
料金:無料