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山﨑愛彦の作品販売がスタート。かたちなきものをあるものに、組み合わせて再構築する絵画

OIL by 美術手帖がおすすめのアーティストを紹介していく「OIL SELECTION」。今回は、山﨑愛彦です。現在、ジルダールギャラリーで佐藤幸恵と開催中の2人展「Scene 03 – LIKE A PUZZLE 」にあわせて、作品を出品いたします。

文・構成=髙内絵理(OIL by 美術手帖)

山﨑愛彦のアトリエ

 山﨑愛彦は、自身のSNSアカウントでシェアした画像を素材として、絵画の内外に有機的なネットワークを構築する絵画を制作しています。山﨑は、先人たちの絵画に対するあらゆるアプローチを経た現代において、表現の独創性は「自分」と「何か」の組み合わせでしか生まれないのではないかと考えます。そこで、山﨑がもっとも関心があり身近なものはSNSでした。例えば、2、3日でいいねがつかなくなっていく旅先での投稿画像に見る、人の関心の差から生まれる消費の速さ。また、SNSのサービス終了で画像が消えてしまう可能性。いっぽうで絵画は、数百年以上残るメディアです。山﨑はこのふたつの速度ギャップを組み合わせて、寿命の短い(=人々の関心の低い)画像を長く残るメディア(=絵画)に置き換えることを試みます。具体的には、自身のSNSアカウントでシェアした観葉植物やクッキーなどの身近な画像を再度ダウンロードし直して、コラージュ的な絵画に置き直していきます。

 また、山﨑は、画像というソフトウェア上の情報がキャンバス上で絵具という実体を持つことを、神が人間のかたちに顕現することを表す「受肉」に例えて話します。山﨑は「思い出を『受肉』している」ように感じ、自身の思い出を実体のあるものにするために絵画という容れ物を選び、実体のあるものに置き換える感覚で制作しています。「受肉」する画像の容れ物として作品を考えたときに、それを液晶的な平面からもっと奥行きがある空間にできたら、より「器」として存在させられると感じた山﨑。近年はこれまでのコラージュ的な平面構成から少し立体性を帯びた展開を試みています。近年よく絵画のなかに登場する線もそのひとつで、これはパソコンのトラックパッドに指でふれたり、ズームしたときの軌跡を表したもの。ブラシツールで描いた線をシルクスクリーンで10層ほど刷り、動きという実体がないものを立体的な線に起こしています。今回の出品作《8da0b6(Printed plant)》では、3DCGを用いて仮想空間に画像を配置した作品を発表します。

 今回の佐藤幸恵との2人展では、これまでの身近なイメージの「コラージュ」から、ひとつの空間における自身の記憶や記録、感性の存在のさせかたを提示した作品を発表。モチーフを時間も場所も自在に絵画空間に存在させて「パズル」のように「コラージュ」して組み立てるスタイルへと展開する山﨑の作品を、オンラインでもお楽しみください。

「Scene 03 – LIKE A PUZZLE」展展示風景より

 

 

 

 

《8da0b6(Printed plant)》(2024)

 

《8da0b6(Seoul, Kyoto, Iwamizawa)》(2021)
 

 

 

※数ヶ月以内に他作品の追加出品を予定しております。

 

 

プロフィール
 

山﨑愛彦

1994年北海道札幌市生まれ、京都市在住。2020年北海道教育大学大学院教育学研究科教科教育専攻美術専修(油彩画)修了。一度SNSに共有した写真をソフトウェアを使用して分解・再構築し、複数の時間性や場所性を持ったコラージュを作成。その下図をもとにキャンバスに投影しペインティングを行う。主な展覧会に、「8da0b6」(京都 蔦屋書店、京都、2023)、「HAPS KYOTO selection #2『山﨑愛彦』(HAPSオフィス1F 、京都、2023)、ドアスコープとベーグル(ギャラリー門馬、北海道、2023)、NEWoMan YOKOHAMA × The Chain Museum Vo.6「平面世界のレトリック」(NEWoMan YOKOHAMA、神奈川、2023)など。

 

 

 

 

Information

佐藤幸恵、山﨑愛彦「Scene 03 – LIKE A PUZZLE」

会期:2024年1月20日~2月11日
会場:ジルダールギャラリー
住所:愛知県名古屋市東区泉1丁目13-25 セントラルアートビル2F
開館時間:11:00~18:00
休館日:月
料金:無料