木津本麗は、ランダムなかたちをモチーフに、偶発的に生じたパーツの重なりを線と色面で抽象的に表現しています。フェルトに絵具を塗り、それをランダムに切ったたくさんのパーツを床に放り投げるように置き、偶然性を利⽤しながらパーツを組み合わせてできあがったものから、自身の絵画に展開していきます。
当初はデザイン科志望であった木津本。大学で油画を専攻したことで油画の表現を追求していくようになります。大学生の頃、植物の丁寧な描写をしていたときに、「植物をずっと目で追っていると、前後感がわからなくなる感覚を覚えた」と話す木津本。これには植物の有機的なかたちの「線」の影響であると感じた木津本は、次第に植物の線だけを抽出して自信の表現に落とし込むようになります。また、自身の表現を模索するうちに、色の「濁り」が気になったという木津本。色の合わせ方をコントロールするために絵具ではなく、あらかじめ色が印刷されている色紙を切り貼りして色の組み合わせ方を研究し始めます。こうして、鮮やかな色彩を重ね、立体感も感じさせる現在の制作手法につながっていきます。
抽象的な表現は、画面上に何が描かれているか、絵の表層からその深層を読み取ることは難しいかもしれません。しかし、それゆえに鑑賞者は自由に想像することができます。身近にある植物や風景の記憶などが契機となり、シンプルな色とかたちで生み出された木津本の作品は、鑑賞者にも自らにとっての身近な存在を想起させます。「解像度が低い事象は、想像の余地があり、自分にとって心地良い」と話す木津本の作品から、彼女の思う心地良いリズム感、色彩を体感してください。
《さかみち》(2023)
《とびら》(2023)
※10月27日12時より作品追加販売スタート※
プロフィ―ル
木津本麗
1998年滋賀県生まれ。2021年京都市立芸術大学美術学部油画専攻卒業、23年京都芸術大学修士課程芸術研究科美術工芸領域油画専攻修了。植物のかたちを抽象化し、線と色面で構成されたペインティング作品を制作している。主な個展に、「星が光るとき」(biscuit gallery、東京、2023)、グループ展に、「grid2」(biscuit gallery、2023)、「Untitled」(SOM GALLERY、東京、2023)、「ぎこちない感覚」(YOD TOKYO、東京、2022)、「grid」(biscuit gallery、2022)など。「ART OSAKA 2023」、「ART FAIR TOKYO 2023」、「3331 ART FAIR 2022」、「ARTISTSʼ FAIR KYOTO 2022」などに参加。
Information
個展「mtk+ vol.16 木津本 麗」 会期:2023年9月16日~10月20日
木津本麗個展「A trail of stardust」 会期:2023年10月27日~11月5日 |