田口愛子の作品販売がスタート。人間の身体における美を追求する絵画
OIL by 美術手帖がおすすめのアーティストを紹介していく「OIL SELECTION」。今回は、田口愛子です。このたび、西武池袋本店 アートカプセル+で開催中の個展「On The Way To」にあわせて、2つのシリーズから新作を出品いたします。
文・構成=髙内絵理(OIL by 美術手帖)
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田口愛子は、人間の身体における美の追求をテーマに、デジタルな要素を平面に落とし込み、現実と虚構を横断する絵画を発表しています。田口は高校卒業後、はじめにアメリカ、その後にロンドンで大学に通い、休暇になると日本に帰国していました。そこで身体の「美」を意識するようになり、社会的な環境が「美」の定義を変えることに気づきます。もともと痩せ型だったため、「海外の、肉付きが良い女性の身体に憧れていた」と話す田口。海外での食生活の影響から自身もそのようになっていきました。しかし、日本に帰国すると、海外にいるとそれが普通だと思っていた自分の体型は太っていると認識されることに驚き、「痩せ型の体型が『美』の基準であったことを再認識した」と話します。環境により身体への認識に差異が生まれ、それに対して違和感を覚えた田口。変形した身体を描きますが、どんなかたちでも尊重して愛すべき存在にしたいという思いから、身体に宿る形態そのものを変形させて新たな生命体「ボディ」を絵画に登場させるようになりました。
日本に帰国してからは制作の方向性が定まらず、焦りを感じていた田口。身体を描くシリーズは描き続けていましたが、新たな展開を模索していました。そのうちにコロナ渦の自粛期間に突入、社会の様々な機能が止まったことで「焦る必要がなくなった」と話す田口。それまで後回しになっていた、背景の精密な描写に時間をかけて挑戦し始めます。渋谷スクランブル交差点の監視カメラの映像を描き起こし、そこに架空の生命体「ボディ」を登場させた作品で初めて絵画の達成を感じたと言う田口。以降、さらに汎用性が高く、展開の可能性が広がるGoogleストリートビューを背景に描くようになり、これが代表的なシリーズとなります。
今回の個展では、「ボディ」たちが自ら個展会場へ集まってきた様子を、Googleストリートビューに記録された軌跡として表現。現実を象徴する背景が虚構である「ボディ」のリアリティを高め、デジタルとアナログを横断しながら、新たな身体が躍動する美しさを描くことを試みます。
《35.6830798, 139.7029691》(2023)
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《DoWee》(2023)
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《LooooWoo》(2023)
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《Nostalgia》(2023)
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プロフィール
田口愛子
2015年ロンドン芸術大学セントラルセイントマーチンズファウンデーション修了。18年同大学ウィンブルドンカレッジオブアートファインアート卒業。主な展覧会に、「On The Way To」(西武池袋本店アートカプセル+、東京、2023)、「35°40'57.4"N 139°44'29.1"E」(MATTER、東京、2022)、「nine colors」(西武渋谷店、阪急うめだ本店、東京、大阪、2022)、「Bodyscope」(Feb gallery Tokyo、2022)、「SHIBUYA STYLE vol.16」(西武渋谷店)、「35°40'10.0"N 139°45'42.7"E」(ギャラリー林、東京、2021)、「SHIBUYA STYLE vol.15」(西武渋谷店、東京、2021)など。「WATOWA ARTAWARD 2021」青井茂賞受賞。
Information
田口愛子個展「On The Way To」
会期:2023年6月8日~27日 |
![](https://bt.imgix.net/oil-magazine/225/main/1686223717377_83e2f95fe19aac0ec64f9fd7339f313f.jpg?auto=format&fm=jpg&h=204&fit=clip 1x, https://bt.imgix.net/oil-magazine/225/main/1686223717377_83e2f95fe19aac0ec64f9fd7339f313f.jpg?auto=format&fm=jpg&h=204&fit=clip&dpr=2 2x, https://bt.imgix.net/oil-magazine/225/main/1686223717377_83e2f95fe19aac0ec64f9fd7339f313f.jpg?auto=format&fm=jpg&h=204&fit=clip&dpr=3 3x)