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田島享央己の作品販売がスタート。心の底からアートを「楽しむ」。生き生きとした、喜びの表現を追求

OIL by 美術手帖がおすすめのアーティストを紹介していく「OIL SELECTION」。今回は、田島享央己です。自分で彫った木彫を細かな彫り跡に至るまでFRPで忠実に再現し、1体1体手作業で着彩したシリーズと、自身の半生をコミカルに描いた初のカラーリトグラフ作品シリーズ「LIFE」から出品されます。

文・構成=髙内絵理(OIL by 美術手帖)

アトリエでの田島享央己

 田島享央己は、人間や動物、ものが持つ生命力を表現するべく、女性像からポップでコミカルな⼆頭⾝の動物たちまで、彫刻をもとにしながら版画まで展開しています。代々続く仏師の家系に生まれた田島は、幼少期より神仏像が身近な環境で、自然と彫刻に触れて育ちました。早くから彫刻家になることを決意、その道を邁進してきた田島は、いっぽうで作家として軌道に乗るまでには長い年月を要しました。「当初は、独りよがりな、相手に「伝わりにくい」抽象的な表現をしがちだった」と話す田島。じょじょに自分と社会との接点を探って表現を擦り合わせながら、相手に「伝わりやすい」表現として生まれたのが、現在の動物たちに代表されるシリーズです。

 モチーフに描かれる動物たちは、人気のあるネコやクマ、パンダなど。しかし、彼らは不敵な笑みを浮かべていたり、どことなく不穏な雰囲気を漂わせています。この相反する要素から生み出された絶妙な表情は、現在の彼の状態を表してもいます。「ものごとは光と影の両面から成り立っているならば、その影の部分に社会や自分自身への不満や怒りが自然に反映されているのかもしれない」と田島は言います。

 そのインスピレーションは、「美術よりも映画やラジオ、音楽などのエンターテインメントからくるものが多い」。あらゆるところから「楽しさ」を摂取する田島は、楽しさや喜びを感じると「生き生き」とする状態を表現に展開。鑑賞者にとっても「楽しさ」を感じられるように表現へ落とし込んでいきます。難解でハードルが高いかのように見えてしまうこともある美術に対して、田島の表現は美術も純粋に「楽しい」娯楽のひとつであることを感じさせてくれます。

 「制作だけに打ち込む環境がそろったいまは、その幸せを噛みしめています」と話す田島。「アートフェア東京2023」 では初の個展ブースを展開、最新作の絵画と木彫の大型作品を発表。くすっと笑えて毒気のある田島ならではのユーモアが存分に発揮された作品群を、個展会場とオンラインでお楽しみください。

 

 

《牛乳を注ぐクマ》(2022)

 

《「LIFE」Series③ For what it’s  worth》(2022)

 

《「LIFE」Series④Sparks》(2022)

 

《「LIFE」Series⑤Ring a bell》(2022)

 

《「LIFE」Series⑦Anything goes》(2022)

 

 

 

 

 

プロフィール

2000年に愛知県立芸術大学美術学部彫刻科を卒業。アウトローな気質をそなえ、彫刻だけでなく絵画領域にフィールドを広げ、幅広く活動している。2頭身の立体作品は、ニュートラルな立ち姿で観る者に様々な想像力を掻き立て、人気に火をつけた。また、木彫作品からもうかがえる色彩感覚と空間構成のセンスが平面にも発揮されている。シンプルに且つ大胆に構成され、隣り合った色と色の関係性が際立った背景のなかに描かれたキャラクターはなんとも不思議な表情や動きで描かれている。20年にはニューヨークで個展が開催されるなど、日本に留まらず、海外でも人気上昇。22年は、世の風潮に逆らうように制作し続けたロック魂がスパークし、自身の半生をコミカルに描いた初のリトグラフ作品「LIFE」シリーズを発表する。ペシミスティックな題材をアチャラカに表現する高度なセンスが高い評価を得ており、田島革命が実を結びつつある。著書に『シドロモドロ工作所のはじめてのお彫刻教室』(河出書房新社、2019)、糸井重里著・小さなことばシリーズ最新作『生まれちゃった。』(ほぼ日、2023)の装丁も手がける。

 

Information

「アートフェア東京2023」

会期:2023年3月10日~12日
会場:東京国際フォーラム ホールE / ロビーギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内3丁目5番1号
開館時間:11:00〜19:00(最終日は16:00まで)
料金:前売券:4,000円(税込)、予約当日券:5,000円(税込)
※小学生以下は、大人同伴に限り入場無料