川端健太は、現代における視覚やコミュニケーションのありかたについて、ブレやボケ、歪みなど写真の技法からも着想を得た作品を発表しています。ものごとの「解釈」に懐疑的だと話す川端は、刻一刻と状況の変わっていく現代においてその曖昧さ流動性に着目し、絵画や彫刻を通してそれを咀嚼し、表現に展開します。
現在の作風が生まれたきっかけに、田舎に住んでいる友人の家を訪ねたときのことが影響していると川端は話します。友人より先に到着した自分を、まだ一度も会ったことがないのに家族がなんの疑いもなく居間にすぐ上がらせてくれたり、居間を通りがかった友人の祖母が驚きもせずお茶を出してくれたことなど、人との距離が近いことを改めて実感したと話します。川端自身は都心に近い場所で生まれ育ち、大家族のような集団で生活するなかでのコミュニケーションが削ぎ落されていることに慣れていました。現在、私たちはUber Eatsで食事を注文し、Amazonで生活必需品を購入、オンラインミーティングで会議を行うようになっています。このように、便利ではあるけれど間接的なやり取りで生活や仕事をすることも可能な環境にあります。コロナ渦で、自分が生きている時代の特徴を初めて意識的に感じたという川端は、その状況を自身の作品としてアウトプットしていきます。
川端が描く人物には、ずっと描き続けているモデルが存在します。そのモデルの人物を生涯を通して取材し、絵画として残していく取り組みを行っています。テクノロジーの発展に伴い間接的なコミュニケーションが増えていくいっぽうで、そこから削ぎ落されてしまうものに気づきたいと話す川端。時代が進むなかで、絵画という普遍的な表現手段でとどめられることはなんなのか。そこを意識的に見つめ、描き続けていく川端の現在地をOIL by 美術手帖への出品作から感じてください。
《blur21》(2023)
《blur22》(2023)
《blur23》(2023)
《blur24》(2023)
《untitled》(2023)
プロフィール
川端健太
2019年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を首席卒業。2022年東京藝術大学美術研究科油画技法材料研究室大学院修了。主な個展に、「Spectrum」(金澤水銀窟、石川、2021)、グループ展に「KUMAEX2021」(東京、2021)、「絵画の筑波賞展」(池袋西武本店アート・ギャリー、東京、2021)など。主な受賞歴に、「絵画の筑波賞 奨励賞受賞」(2021)、「クマ財団活動支援事業」(2021)など。作品は、東京藝術大学美術館などに収蔵されている。
Information
「第26回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」 会期:2023年2月18日〜4月16日
「MEET YOUR ART FAIR 2023『RE : FACTORY』」 会期:2023年3月3日~5日
「アートフェア東京2023」 会期:2023年3月10日~12日
川端健太個展「さわれない形を見る」 会期:2023年3月11日~22日 |