yutaokudaの絵画は、緻密な線描や、絵具が混ざり生じた偶発的な部分から輪郭を抽出する描き方が特徴です。幼少期より絵を描くことが好きだった奥田ですが、画家という職業が現実的に思えず、アパレル業界でデザイナーとして活動します。あるときギャラリーを訪ねた際、作品が購入される瞬間に立ち会った奥田はそのとき、鳥肌が立つほどの感動を覚えたと話します。また、羨望のような感情とともに、ひとつの絵をひとりの人に届けられる可能性を感じた奥田は、その後、程なくして美術の道を志します。
作家として制作を初めて3年、新型コロナウイルスによる有事に直面し、当たり前だったことが当たり前でなくなってしまった状況に喪失感や虚無感を覚えていた奥田。しかし、いま目の前にある日常は特別なことで、そこに感謝の気持ちを忘れてはならないと自分の意識が変わり、苦しい状況でもそれは自分次第でいくらでも変えられることに気づきます。自分が前向きになれた契機を作品を通してシェアしたいと、自分の周りにいる方々、鑑賞者へ贈る「感謝」を花束に描くという「with gratitude」シリーズが生まれました。
花のモチーフは、制作当初から登場しているものです。循環する食物連鎖が、花から始まったら美しいのではないかと着想したことから、モノクロの線画で動物のなかに花を描いたシリーズを発表していました。今回の個展「Circulation」では、象徴として描かれる動物たちが繰り返しめぐる「十二支」から着想を得たシリーズや「with gratitude」など、これまでの自身の制作をもう1回めぐり合わせて、次の展開へと挑んでいます。近年、スタジオを設立し、そこでは次の世代の育成にも取り組む奥田。作品や活動を通してぐるりと続いていく感謝と循環の表現を感じてください。
《Abstract Bouquet 220417 (Turquoise Blue x Blue)》(2022)
《Abstract Bouquet 220417 (Pearl White x Black Gold)》(2022)
《Abstract Bouquet 220417 (Sax Blue x Red)》(2022)
《Abstract Bouquet 220531 (Light Purple x Pink)》(2022)
プロフィール
yutaokuda
1987年愛知県犬山市生まれ、神奈川県在住。
コロナをきっかけに日々の当たり前だと思っていたことが、じつは特別な出来事だったと気付き、その当たり前に感謝し、その思いを作品にしたいという思いから「with gratitude」というテーマで鑑賞者に感謝を伝える「花」を描いている。絵具の混ざった偶発的な部分を、極細のペンでアウトライン化していくことで「偶然」を「必然」に変えていくような描き方をしている。現在は、個展やアートフェアなど国内外問わず精力的に作品を発表し続けている。
Information
yutaokuda個展「Circulation」
会期:2023年1月25日〜2月25日 |