杉田万智の作品販売がスタート。社会の問題を照らす希望の光を描く

OIL by 美術手帖がおすすめのアーティストを紹介していく「OIL SELECTION」。今回は、杉田万智です。このたび、Contemporary Tokyoで1月14日より開催される個展「Dignity and Light」にあわせ、OIL by 美術手帖でも新作を販売いたします。

文・構成=髙内絵理(OIL by 美術手帖)

アトリエでの杉田万智

 杉田万智は、鮮やかな光によって幻想的な雰囲気を醸し出す作品を描いています。現在の作風が生まれたきっかけは、制作の方向性に悩んでいた大学時代に、授業の一環で香港の繁華街を撮影した写真を模写したところ、絵を描くことを心から楽しめたという体験にあります。看板や人物などをかたどった電飾看板の淡い光が香港の夜に風景をつくり出すように、杉田はここではないどこかの風景や、国籍・身分・性別を問わない人間の姿を淡い光で描くことで、「理想の世界」を表現しています。

 個展「Dignity and Light」では、モチーフに花が多く登場します。なかでも燕子花は日本の衣装の文様に多く見られるもので、今回、杉田は日本にある民族の複数性から着想を得た作品を発表しています。連日報道されるロシアによるウクライナ侵攻のニュースから、個人の尊厳が保たれず壊されていく状況を見たと言う杉田。島国ということもあり、日本では日頃から自分たちの「国境」や「境界線」をあまり強く意識せず生活しています。が、改めて日本人や個人の尊厳について考えたとき、彼女は自分のなかにも様々な民族の要素が混合している可能性を意識したと話します。先代の人々が伝統を大事に守り、未来へ継承してきたからこそ存在している現在の自分。その継承を分断するような争いが一刻も早く終焉を迎えられるよう、人間同士を尊重する思考が広がっていくことを杉田は願います。

 現実にある問題を、光り輝く表現に置き換えて照らし出す杉田は、作品によって様々な社会問題について考える契機をつくり出したいと言います。OIL by 美術手帖への出品作から、杉田の願いと祈りを込めた問題提起を感じてください。

 

 

 

《Dignity No.2》(2022)

 

《Dignity No.3》(2022)

 

《Dignity No.4》(2022)

 

《Dignity No.5》(2022)

 

 

 

プロフィール

杉田万智は2000年埼玉県生まれ。2020年女子美術大学短期大学部造形学科美術コース卒業、22年同大学部研究生卒業(学士)。主な個展に、「First Light」(ARTDYNE、東京、2022)、グループ展に、「Artificial Phenomenon」(AMEX Centurion Lounge、Regent Hotel、台北、2022)、「nine colors XVI」(西武渋谷店、東京、2022)、「ブルーピリオド展-BLUE ART COLLABORATION-」(寺田倉庫G1ビル、東京、2022)、「阪急うめだnine colors」(阪急うめだ、大阪、2022)、「JOSHIBISION」(東京都美術館、2021)、「nine colors XV」(西武渋谷店、東京、2021)、第8回「未来展」-日動画廊 美術大学学生支援プログラム-(日動画廊、東京、2021)、「現われの形象」(ARTDYNE、東京、2021)、「シブヤスタイル vol.15」(西武渋谷店、東京、2021)など。「THE PACKAGE by ZOZOVILLA Vol.2」など企業コラボレーションも行う。主な受賞歴に、「女子美術短期大学部2019年度卒業制作展」卒業制作賞、第7回「未来展」準グランプリ・特別賞、第8回「未来展」特別賞、「WATOWA ART AWARD 2022」準グランプリなど。

 

 

Information

杉田万智個展「Dignity and Light」

会期:2023年1月14日〜2月4日
会場:Contemporary Tokyo
住所:東京都品川区東品川1丁目32-8 TERRADA ART COMPLEX Ⅱ 2F
開館時間:12:00〜18:00
休廊日:日・月曜日
料金:無料