feebeeはイラストレーターとして活動しながら、2015年頃から本格的に作品の発表を開始。浮世絵や工筆画(*1)の画法を取り入れ、神獣をモチーフとしたシリーズの制作を始めます。このシリーズでは、神話や伝説などに見られる人間の精神構造や世相についての象徴として表現された神獣を、現代の視点から解釈し、再構築しています。これまでは社会を外から俯瞰するような表現を行ってきましたが、近作では個人と社会との接点へ、彼女の視点は移っていきます。
獣に首を嚙まれている女性を描いた「Bitten from Within」シリーズでは、獣は個人と社会との接点として表現されます。社会との接点は、個人の内面形成に大きく影響を与え人生を豊かにする大切な要素ですが、現代ではその接地面が大きくなり過ぎて、個人が社会との適切な距離を保てなくなっているのではないだろうかと、彼女は提起します。例えば、現代において私たちはひとりでいるときでさえ、スマートフォンを通してSNSでとても長い時間「社会」と関わりを持ち、つねに「他者」や「他者から見た自分」を意識し続けている状況があります。
feebeeは、普段、無意識に見落としてしまう状況を、表現を通して可視化することで「認識する」ことに焦点を当てて、考えるきっかけにしてほしいと話します。獣に噛まれたことを「無意識」のままにしておくことも、その獣を取り除こうと「意識」することも、私たちの選択次第なのかもしれません。OIL by 美術手帖への出品作から、社会への感覚や認識に対する新たな視座を見つけてください。
*──対象の輪郭線を精密に描き、輪郭線で囲まれた面を彩色で埋める中国水墨画の技法。
《Bitten from Within 056》(2022)
《Bitten from Within 057》(2022)
《Bitten from Within 058》(2022)
《Bitten from Within 059》(2022)
プロフィール
イラストレーターとしてのキャリアを経て、2015年からアーティスト活動を開始し、国内外で展覧会を行う。近年はアパレルブランドへの作品提供、アートトイのキャラクターデザイン、木版画作品の制作など各種コラボレーションも意欲的に行っている。主な個展に、「Bitten from Within」(roidworksgallery、東京、2022)、「多角的視点」(Gallery Mumon、東京、2021)、「変化しつつ循環するもの」(六本木ヒルズ A/D ギャラリー、東京、2020)、「公平な観察者」(Kiyoshi Art Space、東京、2020)、「共生」(Gallery Mumon、東京、2019)など。主なグループ展に、「”ART and PULSE”Japanese Contemporary Art Group Exhibition」(333gallery、台北、2022)、「Post Imagine」(ASTER、石川、2022)、「Ubiquitous」(roidworksgallery、東京、2022)、「ART ART TOKYO × ブレイク前夜」(大丸松坂屋百貨店、東京、大阪、2021)、「三諦円融」(hpgrp Gallery Tokyo、東京、2018)など。「ART OSAKA 2022」、「Art Fair Tokyo」(2021)、「Art Beijing」(2019)など国内外のアートフェアにも参加。出版物に『The art of feebee1』(2006)、『The art of feebee2』(2011)がある。
Information
「鸞翔鳳集」 前期:2023年1月12日〜2月4日、後期:2023年2月9日〜3月4日
「AaP2023」 会期:2023年2月4日〜2月12日 |