アレクサンダー・カルダー
Alexander Calder
アレクサンダー・カルダーは1898年アメリカ・フィラデルフィア生まれ。空気で動く彫刻「モビール」の発明者。父は彫刻家、母は画家で、自身は工学技師などの職に携わり、アート・スチューデンツ・リーグで絵画を学んだ。1926年にパリへ渡り、針金細工で動かす「カルダーのサーカス」を制作。シュルレアリスムの作家たち、とくにジョアン・ミロに影響を受け、ピート・モンドリアンの抽象絵画との出会いが「モビール」誕生のきっかけとなった。
針金や金属、木からなるモビールは、交友のあったマルセル・デュシャンによって命名され、初めは機械仕掛けでつくられた。32年に、力学を応用した自然に動く宙吊りの作品として発展し、39年に代表作《ロブスターの罠と魚の尾》を発表。49年の《スカーレット・デジタル》などを通じ、モビールの起点であるモンドリアンの絵画の再解釈を試みた。加えて50年代からは動かない「スタビル」の作品を制作。モビールと同様に金属などを素材とし、時には別々の彫刻を組み合わせることもあった。また、シカゴ連邦センターに設置される《フラミンゴ》(1974)をはじめ、パブリックアートも多く手がける。微妙な空気の流れに反応する偶然性の面白みや、空間との関係を意識させるカルダーの実践は、彫刻の表現に新風を吹き込み、キネティック・アートの先駆けとも位置づけられている。76年没。