ナイジェリア人アーティストでデザイナー、ニフェミ・マーカス＝ベロ（Nifemi Marcus-Bello）による初の作品集。

本書は、作者が手がける三部構成の彫刻シリーズ「Oríkì」を紹介する一冊であり、ブロンズ、アルミニウム、銅を主題とした 『Act I「Friction Ridge」』、『Act II「Tales by Moonlight」』、『Act III「Whispers of a Trail」』で構成されている。

「Oríkì」という書名は、西アフリカのナイジェリアなどに暮らすヨルバの人々の文化に伝わる「オリキ（oríkì）」と呼ばれる賛歌の伝統に由来している。オリキとは、家族や個人の出自や性格、歩んできた歴史を讃える言葉を連ねた口承の詩で、祝福や儀礼の場で唱えられるものである。本書には、作者の母であるフォラケ・マーカス＝ベロ（Folake Marcus-Bello）が制作したオリキが収録され、合わせて幼少期から現在に至るまでの作者の創作の歩みを振り返る個人的なエッセイも掲載されている。

本書には、作者による彫刻シリーズのフルカラーポートレートに加えて、制作過程の写真や個人アーカイブを収めたフォトダイアリーが掲載されており、「LOEWE FOUNDATION Craft Prize 2025」での特別賞（Special Mention）、「Hublot Design Prize 2022」などの受賞歴を持ち、「ニューヨーク近代美術館（MoMA）」や「シカゴ美術館（Art Institute of Chicago）」、「デザイン・ミュージアム（The Design Museum）」に所蔵を持つ作者の作品が、どのような着想と個人的な歩みによって形づくられてきたのかを明らかにしている。これらの作品は、素材とアイデンティティのあいだにある作者の継続的な対話を映し出すものとなっている。

また、The Eames Officeのディレクターを務めるイームズ・デメトリオス（Eames Demetrios）の序文、キュレーターであるアイリーン・スンウー（Irene Sunwoo）、キュレーターのグレン・アダムソン（Glenn Adamson）、キュレーターのリタ・ウェドラオゴ（Rita Ouédraogo）によるエッセイ、さらにライター、評論家、キュレーターであるカミーユ・オキオ（Camille Okhio）によるインタビューが収められている。

本書は、『A LIFE IN DESIGN by Miguel Milá』、『ARRANGING THINGS: A RHETORIC OF OBJECT PLACEMENT by Leonard Koren, Nathalie Du Pasquier』、『SELECTED WORKS by Lucia Di Luciano, Giovanni Pizzo』、『BEASTS by Sam Chermayeff』、）『A THING ON A TABLE IN A HOUSE by Serban Ionescu』など、同出版社APARTAMENTOが手がけるアート・デザイン書のラインナップに新たに加わる一冊となる。