本書は、雑誌の内容と同様に、多様な感性、素材、知識、ノウハウを結集する単発の協働を基盤とし、特定の建築的介入を通じて田舎の建物を「書く場所、ものづくりの場所」へと変容させることを目指す。このプロジェクトは、ゲストとの協働により寄稿が個別に発展しつつも相互に共鳴する『Accattone』と同様の編集手法で建築プロジェクトを展開しようとする挑戦から生まれた。

ページという空間から建築環境へと遷移する本プロジェクトは、実践者としての建築家・編集者の姿を模索する。「発明という概念よりも、既存の素材を自覚的・創造的・批判的に活用する姿勢を重視する。ここでいう『素材』とは、現代人の思想と先人の思想、文化が生み出した多様な産物、そして私たちの領域に存在する無名の工芸品を指す。我々は建築家であり編集者である。我々の仕事は、共通のプロジェクトを軸に相互に作用し合う素材間の関係ネットワークを活性化させることに注力する。それは既存のものから始まり、それを選び、配置し、手入れし、『キュレーション』し、変容させる。」

その建物はフランス、パルフォンデヴァルに位置する。既に居住可能ではあるが、公共性を拡大し、「ものづくり」を推進する取り組みを持続させるための設備が不足している。したがって行われる、7つの介入は次の通りである。アリス・パリ（Alice Paris）と共同制作された「装備されたファサード」、アルノー・デペール（Arnaud Depeyre）と共同制作された「有用な柱」、アン・グロッテ・ヴィケン（Anne Grøtte Viken）と共同制作された「拡張された壁」、エレオノール・モラン（Éléonore Morand）と共同制作された「変異した庭」、ローザ・フェンス（Rosa Fens）、ノミ・シュラウウェン（Nomi Schrauwen）と共同制作された 「逸脱した雨樋」、エルメス（Elmēs）と共同制作された「磨かれた池」、シエル・グロメン（Ciel Grommen）、マキシミリアン・ロヤッカーズ（Maximiliaan Royakkers）、クレマンティーヌ・ヴォルティエ（Clémentine Vaultier）と共同制作された「オーブン」である。

このプロジェクトは、『Accattone』の編集者であるソフィー・ダール（Sophie Dars）とカルロ・メノン（Carlo Menon）によって構想され、パリの「Académie des beaux-arts」で、エマニュエル・キアッポーネ・ピリオ（Emmanuelle Chiappone-Piriou）、ベンジャミン・ラフォア（Benjamin Lafore）、セバスチャン・マルティネス・バラ（Sébastien Martinez-Barat）がキュレーションを担当した展覧会「Émulations」の一部として刊行された。この展覧会では、「Écriture（書き言葉）」をテーマにしたコンペティションで選ばれた、「Studio ACTE」のエステル・バリオール（Estelle Barriol）による「Spolia」、CompMonksによる「L’attrape-rêves」、マックス・ターンハイム（Max Turnheim）による「L’Usage de l’Espace」も展示。本書は、「Prix Charles Abella」を受賞。

愛知県で初となる大型アートブックフェアのキックオフ「Aichi Art Book Fair（AABF）2025」内の企画「Distribution Futures」にてAABF運営メンバーによる推薦の元、仕入れが行われその後流通となった。