韓国出身、ドイツと韓国を拠点に活動するアーティスト、ヤン・ヘギュ（Haegue Yang / 양혜규）の作品集。2020年10月から2021年4月にかけて「オンタリオ美術館（Art Gallery of Ontario）」で開催された展覧会に伴い刊行された。

作者は、コラージュからキネティック・スカルプチャー（動く彫刻作品）まで、さまざまな形態を用いた多面的な作品で知られており、それらは移民問題、異文化翻訳といった、歴史的、現代的な物語を鋭い視点から想起させる。抽象的な言語を用い、ベネシャン・ブラインド、電球、物干しラック、毛糸、鈴など、よく見られる日常的な素材を、深く寓話的かつ綿密に構築されたインスタレーションや彫刻作品へとへと変容させ、素材を元の文脈から解離させる。インスタレーションは、多様な香り、音、質感を使い、鑑賞者の感覚を刺激する没入型の環境となる。

本書には作品のみならず作者のキャリアを解説するエッセイを収録することで、「オンタリオ美術館」で開催されたこの画期的な展覧会が満たす領域を余すところなく書籍の形で描き出し、現代美術分野における作者の変革的な貢献がいかなるものかを世に伝える。