ケニア人アーティスト、マイケル・アーミテージ（Michael Armitage）の作品集。 2023年7月から10月までオーストリアの「ブレゲンツ美術館（Kunsthaus Bregenz）」で開催された展覧会に伴い刊行された。

作者がルブゴ（※註）に描いた大規模な油画作品は、どこか趣のある魅惑的な美しさを備えていると同時に陰鬱な雰囲気を醸し出しており、どこか仄暗く不穏に感じさせる。イギリスとケニア両方のバックグラウンドを持つ画家として、作者は東アフリカの故郷に由来するストーリーやテーマとヨーロッパと東アフリカの芸術的な伝統を見事に織り交ぜる。

「ブレゲンツ美術館」で展覧された作品は、3フロアにまたがり政治的、社会的、さらに心理的な情勢の脆弱さを物語る。

小さな建築物である「ブレゲンツ美術館」での展示方法にインスパイアされ、本書は控えめにグラフィックデザインが施されており、それでも絵画とドローイングは大きなスケールでその輝きを存分に見せる。

展覧会のドラマツルギーを振り返るべく、作者と美術史家のトーマス・D・トラマー（Thomas D. Trummer）による広範な内容で語る対談が収録作品を補足する。同テキストで作者は自身の作品制作過程における、深くパーソナルな見識についても言及している。本書は英語とドイツ語で執筆されている。

※註 ウガンダで600年の歴史を持つ伝統産業によって作られている樹皮布（バーククロス / 布状になめした木の皮のシート）であり、ユネスコの文化遺産にも登録されている。