ウィーンに拠点を置く非営利美術協会「ミュージアム・イン・プログレス（Museum in Progress）」の作品集。1990年以降、現代美術の伝統的な展示形式の範囲を超え、革新的な方法を追求し新たに見出すことを目的とし、活動している。

無形の美術館、社会的な彫刻作品、未来の美術館のための実験室... 本書は「ミュージアム・イン・プログレス」のインスピレーションで満ちた「展覧会」である。同協会は、これまでオープンスペースを一時的な活動領域として、広告看板やビルのファサード、コンサートホール内、テレビ放送、さらには飛行機内にまで、美術を介入（インターベンション）させてきている。本企画は、まるで実験室のように、社会政治的なアクションとしてその効力を発揮するアート・プロジェクトであり、常に最先端を行く実験を企てている。

本書は「ミュージアム・イン・プログレス」のアーカイブの中から、制作当時と同様に今日においても意義のあるものと判断された作品が選定されている。さらに、アーティストのエイドリアン・パーチ（Adrian Paci）による「Analogue Encounters」が介入することで、一冊一冊をユニークなものとし、またアーティストのローレンス・ウェイナー（Lawrence Weiner）が手がけた表紙によって、本書を開くたびにこの「展覧会」を感覚的に楽しみ、その経験を通じて新たな道筋へと誘うプログラムとなるべく作られている。