アメリカ人アーティスト、ジャスパー・ジョーンズ（Jasper Johns）の作品集。今日も健在のアーティストの中で最も多大な影響力を持つとされる作者は、過去65年間に渡って常に新しい表現に挑み、革新的で多様な作品を作り続けてきた。長年追いかけてきたテーマである「ミラーリング」（鏡像）と同じものを二つ作る「ダブル」（重複）にインスパイアされた本書は、作品とその今日に及ぶ関連性をエキサイティングで独創的な観点から考察している。

本書では、キュレーター、研究者、アーティスト、作家など、多彩な顔ぶれによるエッセイを収録。繰り返し使われてきたモチーフ、場所の探求、幅広い表現手段の使用など、作者の作品の様々な側面についての考察がなされている。またこれらのエッセイの多くは2つ1組で読めるようになっている。例えばキャロル・ダナム（Carroll Dunham）は夢、ルース・ファイン（Ruth Fine）はモノタイプとワーキングプルーフ、林道郎は日本、テレンス・ヘイズ（Terrance Hayes）は国旗、コーム・トイビン（Colm Toíbín）は悪夢について書いている。また本書は、作品の幅広いテーマをより深く理解できるように、版画、ドローイング、絵画、彫刻のイメージを厳選して組み合わせ、作者の膨大な作品の中に新しいつながりを描き出してみせた。

本書は、2021年から2022年にかけてホイットニー美術館とフィラデルフィア美術館で同時に開催された「ミラーリング（鏡像）」のような回顧展に伴い刊行された。作者のアーカイブから未公開・未発表の作品を豊富に掲載。多様性に満ちた豊かな作品世界を新しい視点と意味深い方法で見直すヒントに満ちた1冊。