本作品の元となった油彩画シリーズ『 View – 13 thoughts, 2010-12 』の制作期間中に、3.11（東日本大震災）が発生しました。一貫して風景を描いてきた津上にとって、3.11は、それまで眺め、描き続けてきた風景を同じ視線では見つめさせない衝撃でした。当たり前のように見ていた震災前の風景、そして一見何も変わらないようにも見えるが、同じ気持ちでは見ることの出来ない風景、その変化を心の中に持ちながら制作は続きました。
この間に描きためられた水彩によるスケッチから震災後の2作品を選び、木版画（リトグラフ併用）が制作されました。スケッチに立ち戻ることで、風景に立ち向かったときの気持ちがストレートに顕れた表現となりました。

○アーティストプロフィール

津上みゆき / Miyuki Tsugami

1973年、東京生まれ、大阪に育つ。1998年京都造形芸術大学大学院芸術研究科修了。
主に顔料、アクリルを用いて絵画を制作。
作品発表当初から一貫して風景画を描き続け、全ての作品を「View」と名付けている。自然を繊細かつ素直に受け止めスケッチを描き、それらを元に彼女独自の感性を通して表現された風景画には、東洋的な自然への敬意と透明な空気感が現れる。
2003年、「VOCA展2003 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」VOCA賞受賞。
2013年、五島記念文化賞美術部門新人賞。
他、受賞、パブリックコレクション多数。