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WAITINGROOM代表・芦川朋子が語る「WORKS ON PAPER」参加アーティストの個性と魅力

WAITINGROOMで7月6日から28日に開催される個展「WORKS ON PAPER」。この展覧会には、川内理香子、平子雄一、河辺ナホ、水木塁の4人のアーティストが、紙を使った作品を発表しています。それぞれのアーティストの魅力や知られざるエピソードを、ギャラリー代表の芦川朋子に語ってもらいました。この展覧会の作品は、OIL by 美術手帖でのみ購入できます。

川内理香子 五感を研ぎ澄ませてつくる線

川内理香子 Untitled 2016

 出会いは2015年。彼女はまだ多摩美術大学の学部生で、資生堂ギャラリーの「Shiseido Art Egg」で個展を開催していました。見に行ったときに本人がいたので声をかけ、その後、作品を見せてもらったりするなかで一緒に仕事を始めました。

 本人に会ったことがある方や、インタビュー記事を読んだことがある方はご存知かもしれませんが、心配になるくらい体の線が細いんです。食べ物が体の中に入ってくる感覚が普通の人と違うため、普通には食べることができないということが一つの理由なのですが、それが創作の原点にもなっています。五感が普通の人よりも敏感で、何かに触ったり見たり食べたりした時に、それが通常とは別の形で身体に迫ってくる。そのことがそのまま作品として表現されています。

 紙の上に描かれた一本の鉛筆の線も、本人は線ではなく「物質」としてとらえているんです。だから、その線が紙の上の鉛筆の線から針金になり、絵具を厚塗りにしたキャンバスの上を引っ掻いた線になり、ネオン管になり、樹脂の彫刻になり、変幻自在に拡張していっているのも、本人にとってはいたって自然な流れでのことなのです。細い体を振り絞って出てきた紙の上の一本の線からスタートする。その意味で今回のドローイング作品は、川内の出発点とも言えるかもしれません。

 本人の話に戻りますが、心配になるくらい体の線が細いんですが、精神的には非常に強靭。創作に対する絶対的な姿勢や、作品全般に対して通底している思想などは、細い体からは想像できないほど強固なもので、一緒に仕事をするパートナーとしてその強さには絶対の信頼を置いています。来年には海外での発表も予定されており、今後の展開がますます楽しみな若手アーティストの一人です。

川内理香子の作品一覧はこちら

平子雄一 日常的な創作が育む貪欲な表現

平子雄一 Resin 41 2019

 その爆発的な制作力とアイデアの引き出しの多さは、類い稀な才能だと思います。平子と仕事をしはじめたのは2013年頃から。その頃にはすでに日本国外でもたくさんのギャラリーと仕事をしていて、年間を通してかなりの数の展覧会で発表をしていました。いまでは日本以外に、台湾、フィリピン、ロッテルダム、デンマークにギャラリーがあり、そのほかにも様々な国で企画展に参加しています。

 「プロフェッショナルなアーティストであること」に対する意識が人一倍強く、たくさんの良い作品を制作し、多くの場所で多くの人に作品を観てもらうことを目標に活動してきています。ただ、「たくさんの作品を制作する」となったときに陥りがちな、制作がルーティンワーク化してしまうということは平子には縁のない話で、どんどん新しいアイデアやイメージを生み出していきたいという貪欲さが魅力の一つだったり。

 また、素材や作品形態も新しいことを試したいというチャレンジ精神と好奇心が旺盛で、ペインティングから彫刻、インスタレーションから、はたまたサウンドパフォーマンスまで、そのフィールドの広さもアーティストとしての強みだと思います。最近では、粘土と木との組み合わせでつくっていた彫刻作品にセラミックの彫刻作品が新しいラインとして加わり、着実に表現の幅を広げていると感じています。

 「WORKS ON PAPER」で展示するドローイング作品は、展覧会に合わせて制作することが多い絵画や彫刻作品と違って、日常的に手を動かすために時間を見つけては制作している小作品です。クレヨン、水彩、ペン、鉛筆など、様々な素材で描かれていることも平子らしさだと思います。

 私生活ではつい先日次男が産まれたばかりの二児の父親で、平子の長男と私の娘の歳が近いこともあり、よく子育てトークをしたりもします。また多くのコレクターの方に言っていただいていることですが、平子は本人の人柄も人気の大きな要素であり、作品中のアイコンとなっている「植物人間」がそのまま画面から出てきたような、強さと優しさと楽しさと厳しさを兼ね備えた魅力的な人です。今年は日本国内ではこのあと、8月に千葉の佐倉市美術館でグループ展に参加、12月にはWAITINGROOMでの個展が控えています。

平子雄一の作品一覧はこちら

川辺ナホ 軽やかさの中に宿る確かなコンセプト

川辺ナホ Continent of Africa (Ver. A) #5 2015

 もう15年以上、ドイツのハンブルグに住んでいるアーティストです。最初の出会いは学芸員の方の紹介でしたが、私も過去に彼女の個展を偶然見て印象に残っており、一緒に仕事をする事になりました。

 彼女はもともと映像学科の出身ですが、その後ドイツに留学してUniversity of Fine Arts of Hamburgに入って、様々なメディアを使った制作スタイルへと移行していきました。島国である日本から国境線だらけのヨーロッパに引っ越したということが大きく影響し、世の中に存在する様々な「線(ライン)」をテーマとした作品を、継続的に制作していくことになります。

 今回の企画で展示する、アフリカのすべての国境線を紙で切り取った作品もそのひとつです。「私たちの社会の中にある様々な境界線を観察し、抽出し、形にすることは、その時代の輪郭を残すことになるのではないか」と本人が言うように、目に見えない境界線という現象に、慎重なリサーチを経て選ばれた様々なマテリアルを使って形を与えることが制作のベースになっています。そのようなプロセスを経て完成した作品は、非常にコンセプチュアルでありながらも、ビジュアル的にも美しく楽しめる要素を兼ね備えており、そこのバランス感覚が絶妙なアーティストだと思っています。妙に観念的にもならず、ポリティカル・コレクトネス(政治的正当性)にも過剰にとらわれない、詩的な要素とある種の軽やかさを持ち合わせながら、考え抜かれたはっきりとしたコンセプトが脈々と根づいている、そんな作品群です。

 個人的に思うことですが、日本語で話しているときよりもドイツ語で話しているときの方が、キュートさと真面目さがうまく混ざったような、本人の魅力がよく出ている気がします。去年バーゼルのフェアに出た際には、ドイツ語が公用語の一つであるスイスで、彼女にはずいぶん助けられました。今年はハンブルグの友好都市である大阪で、友好都市提携30周年記念の展覧会を企画展示する予定です。

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水木塁 水平と垂直をつなぐサブカルチャーへのまなざし

水木塁 宙返り鳩 - たくさんの中心点を持つ円運動のドローイング #3 2019

 つい先日までWAITINGROOMでの初めての個展を開催していたアーティストです。意図はしていないのですが、うちのギャラリーは関西(主に京都)在住のアーティストが多く、その関係で京都在住のアーティストと知り合うことが多いのですが、水木塁もその一人です。

 スケートボーディングやDJにも多大なる興味を持って取り組んでおり、それらサブカルチャーをいかにハイカルチャーである現代アートと融合させて作品として昇華させるか、という点に意識的に取り組んでいます。

 水木の重要な特徴として挙げられるのは、平面と立体、垂直と水平という異なるベクトルを持った状態を、作品や展示空間でいかに滑らかにつなぐかということにも、制作全般を通して意識的に取り組んでいるという点です。湾曲した写真作品が、そのインパクトもあり水木作品のアイコン的なシリーズになりつつありますが、うちのギャラリーでの個展で初めて発表した「Shigam」という絵画シリーズは道路用塗料を用いたペインティングで、地面(水平)を壁(垂直)に立ち上げたという点では、「水平(立体)と垂直(平面)をつなぐ」というその他の作品シリーズと同じコンセプトを軸に展開されています。今回出展されるスニーカーの箱を支持体にしたドローイング作品も、立体として流通していた箱を折りたたんで平面にしているという点が、その他の作品シリーズとコンセプトを共有している点です。

 もうひとつ、水木が取り組んでいるのが、自分の個展のクロージングとしてクラブイベントを必ず開催するということで、個展のクロージングの際に私は初めて水木のDJプレイを体感したのですが、「なるほど確かにDJとは既存の音楽を解体して再編するという行為で、水木作品の制作手法につながるなあ」と考えたりしつつ、最終的にはみんなで音楽にあわせて楽しく体を動かしていて、難しいことはとりあえずおいておこう……などと思いながら私も踊ってしまいました(笑)。その様子を「いいねえーいいねえー」ってニヤニヤしながら見ている水木がいて、なんとなく彼がクロージングのクラブイベントにこだわる理由がわかった気がしたのです。

水木塁の作品一覧はこちら

Information

WAITINGROOM × OIL by 美術手帖「WORKS ON PAPER」

会期:2019年7月6日~7月28日
会場:WAITINGROOM
住所:東京都文京区水道2-14-2 1F
電話番号:03-6304-1877
開館時間:12:00~19:00(日〜17:00)
休館日:月、火、祝
料金:無料